2011年5月23日 NO.9
大阪市立大学大学院工学研究科
講師 鍋島美奈子
今回は、昨年上海滞在中(2010年8月)に、当時本学工学部環境都市工学科の4回生だった小山恭侑くんと、上海大学の学生さんと一緒におこなった温熱環境の実測調査について報告いたします。上海の中心部には、旧租界エリアなどに歴史を感じる街並みが残っていて、街路樹で覆われ涼しげな通りがたくさんあります。そこで、街路樹のもつ温熱環境の緩和効果を簡易的に計測してみました。
実測場所は、上海市中心部の地下鉄10号線「陕西南路」駅の南側の「南昌路」です(図1)。南昌路は片道1車線ずつの細い街路で、陕西南路より東側は豊かな街路樹に覆われおり(写真1)、陕西南路より西側の地下鉄10号線駅出口付近は街路樹がほとんどありません(写真2)。2点間の距離は100m程度で、双方の温熱環境を同時に計測し、街路樹による効果を検証しました。写真3に示すように温度、湿度、風速、グローブ温度(銅製の黒球=グローブ球の内部温度、日射熱や放射熱の影響を測る項目)を計測することができる測器(京都電子製アメニティーメーター)を使用して得られたデータから、体感温度指標のひとつであるSET*(エスイーティースター:標準有効温度)を算出しました。
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図1 実測場所:上海 南昌路Google Mapより
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写真1 南昌路の東側(日陰) |
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写真3 京都電子のアメニティーメーターで、 温度、湿度、風速、グローブ温度を計測
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結果を図2に示します。18日10時半の計測ではSET*の差は15分平均で2.2℃、19日14時の計測では1.0℃の差が生じています。日陰では日なたに比べて、人体が吸収する太陽からの日射熱や道路面からの放射熱が減少するため、平均放射温度で5~20℃小さくなり、涼しく感じます。ただ、南昌路東側のように街路樹で道路全体が覆われたような構造になると、日なたの風速が毎秒0.5~2.5mの際でも日陰では毎秒0.5m以下になっており、街路樹のせいで風速が毎秒1~2m程度弱くなってしまい、涼しく感じる効果を弱めてしまうことがわかりました。これらの結果を総合すると、体感温度SET*の差として1.0~2.2℃程度日陰の方が涼しく感じるという結果になりました。
上海では、南昌路東側のように道路が街路樹で覆われてしまうような緑豊かな道が多く存在するのですが、なかには交通量が多く慢性的に渋滞しているような場所も見受けられます。そのような道路では、木陰の効果で体感的には涼しく感じますが、自動車からの排気ガスを上空に逃がしにくくなるため、大気汚染物質の濃度が高くなる危険性があります(図3)。
豊かな街路樹のある街並みを、本当の意味で快適な空間とするためには、電気自動車の普及や交通規制も必要になるでしょう。