|
経済トピックス【2007年8月】
|
|
どうなる、中国の地域医療
(受付に入りきらない患者は病院の外まで列を作る-上海市内で) 上海のような大都市の病院では、中国全国から患者が集まってくる。その数は半端ではなく、有名な教授に診察してもらおうと思えば、予約に3ヶ月待ちというような現象も見受けられる。さらには、ダフ屋が出現して、予約の番号札を高額で売りさばいていることも上海の華山医院や瑞金医院などで発覚した。ダフ屋は徹夜をしてまでも、有名な教授の番号札を獲得してくるという。こうした事情を知らず、田舎から夜行列車や飛行機を乗り継いで、やっとの思いで上海にやってきた患者にすれば、まさに青天の霹靂だ。 どうして、患者は地元の中心都市の大病院で診てもらわないのか?日本人の我々からすれば理解に苦しむかもしれない。背景には、患者の医療に対する不信感があることを忘れてはならない。 中国でも経済が最も発展している都市、上海を例にとってみよう。衛生部門がまとめた統計によると、上海近郊の農村エリアで地域医療を担っていて、衛生部門に登録されている医師3700人のうち、短大レベルの学歴の医師で0.7%、専門学校レベルの学歴で18.2%、学歴がない医師が81.2%となっている。 さらに、46歳〜55歳の年齢層が54.7%と高く、高齢化の問題が突出している。(2007年7月に「解放日報」報道) この中では、医学部の大学卒の医師はほとんどゼロに近いことが分かる。大都市には学歴の高い医師が集中する一方で、上海の郊外でさえこの有様なのである。地方都市の場合、どういう状態であるのか想像に難くない。日本の地域医療問題とはまた別レベルの問題であることが分かる。そのため、こうした地方からやってきた人たちは口をそろえて「地元の医療機関は信用できない」と言う。 また、中国の場合、医療保険が適用される範囲が限られている。上海市民の場合、上海市内の医療機関では、公的医療保険が使えるが、それ以外のエリアでは原則使えない。その逆もまた然りで、例えば広州市で公的医療保険に加入している人でも、上海ではその保険は使えない。また、地方の農民となれば、公的医療保険すら存在していないところもまだまだたくさんあり、当然上海で治療するとなるとすべて自費になり、多額の医療費を自己負担しなくてはならない。 こうした現象が、患者と医師の関係を非常に複雑にしている。大都市を中心に、トラブルがあるごとに医療事故だと患者が騒ぎだし、病院・医師を訴える傾向が強い。この上海でも然りだ。 もちろん、一部公立病院にある体制の古さから来る慢性的な問題体質が指摘されているが、そのほかにも、高額の医療費を自費で支払うので、患者の権利意識がよりいっそう強くなっていることも考えられる。 その結果、同年代の大卒サラリーマンと比較しても給与が低く、ストレスが多い医師という職業を辞める人が増えている。広州など中国の大都市で、手取り1000元強程度の初任給では、生活していくのも大変だ。 転職先は製薬会社のMR(=医薬情報担当者)が圧倒的に多い。そのため、中国には臨床医師資格をもつMRが目立つのだ。その一方で、昨今の医学生の急増にともない、抜けていった人員の補充はそれほど難しくない。医学生の就職難は今も続いており、一部大学では入学試験の合格ラインを大きく下げているところもある。中国医師協会の調査でも、医師をしている親の8割は子供に継がせたくないと答えているほど、割が合わない職業に成りつつある。 ところで、地方の医療事情に関しては、我々日本人が中国で行動をする際にも、気をつけておかなければならないことでもある。すなわち、上海・広州・北京など大都市ならともかく、中国の田舎などに旅行に行った場合、病気やケガに見舞われたときに果たして満足できる対応が行えるかという点だ。これから夏休みに、中国各地へ旅行にいく日本人が増える。中国は発展してきたとは言え、まだまだ発展途上国であるということを旅行者1人1人が肝に銘じておく必要がある。(以上) |