経済トピックス【2007年5月】

 

               

新幹線「和諧号」が中国にもたらしたもの

新幹線CRH型「和諧号」は今でもすごい人気だ 

  日本のマスコミでもかなり話題になった中国の新幹線CRH2型の「和諧号」は、418日より37編成が中国全国で本格的に運転が始まり、今年の5月の労働節連休には大量高速輸送に大活躍した。乗車券も当日ではまず購入は不可能なぐらいの人気で、日本と違って特に1等車となるグリーン車の人気が高い。20077月のダイヤ改正でも、更なる増発が計画されている。

 

列車に乗るという概念を根本的に覆す 

 上海人にとって、鉄道の利用は「遅い」、「汚い」、「ダイヤが不正確」とマイナスイメージが非常に多かった。しかし、今回のCRH2型「和諧号」の登場が、根本的にこのイメージを覆すことに成功している。まさに、中国の鉄道に革命的変化をもたらしたといっても過言ではない。

 とくにスピードアップには目を見張るものがある。たとえば、上海-昆山に関してもその変化を感じ取れる。1997年から今回のダイヤ改正まで30分かかっていた所要時間が、CRH2型が投入されてたった18分となった。江蘇省の昆山が上海の通勤圏になるのも、おそらく時間の問題だろう。下手すれば、上海市内の交通渋滞を計算すると、市内からよりも昆山から通勤したほうが近いというような人も出てくるかもしれない。

さらに、劇的に所要時間が短縮された路線もある。上海南から長沙にいたっては、これまで18時間22分かかっていたのが、新幹線の導入で7時間31分に、上海南から南昌もこれまで寝台列車で12時間25分かかっていたのが、5時間8分に大幅に短縮された。大動脈である上海-南京も2時間17分から1時間58分になっている。

スピードアップは、輸送力の増大にも貢献しており、418日以降、輸送能力が10.9%も増加した。慢性的な輸送力不足に悩む中国の鉄道にとって、まさにCRH2導入は決定的な切り札であったといえよう。 

●長江デルタエリアを地下鉄のように結ぶネットワーク 

 今回の高速列車投入により、利用者の中近距離と遠距離のすみ分けが進み、中近距離の利用者に関しては、まるで地下鉄に乗るような手軽さと定時制、速達性を目指している。これは、2005年に発表された『環渤海京津冀地区、長江デルタ地区、珠デルタ地区城際軌道交通網計画』にもとづくもので、上海を中心にした長江デルタ地区の場合、上海-南京、上海-杭州を中心に、各都市を1時間〜2時間以内で結ぶとしている。さらに、大動脈である上海-南京に関しては、224億人民元を投入して、全長296キロの新線を建設し、上海を中心にした時速200キロ程度の高速鉄道を大増発する。すでに、中国国家発展改革委員会の批准を受けており、実現すれば南京―上海間が1時間半で結ばれることになる。もちろん、速達化で上海から蘇州、無錫、常州、鎮江、など周辺都市へのアクセスはさらに向上する。運転間隔も4~5分間隔が目指されており、長江デルタエリアが高速電車で気軽に移動できるようになる。

●列車酔いする人も 

 ただ、今回の新幹線投入は、日本のものと違って、在来線で高速に走らせている。すなわち、貨物列車や寝台列車の間を縫うようにして、時速250キロの列車が疾走しているのだ。そのため、中国のメディアでも、時速200キロ以上の走行時での横揺れが問題になった。日本と違って、列車酔い対策も考えてか各座席にエチケット袋が配置されているのもそのためだろう。筆者も実際に乗ってみて、とくに車端部での左右の揺れが気になった。

中国では、これらは正常な現象として解説されているが、やはり今後の線路の改良や高速安定性に関しては課題を残した形となっている。 

●北京-上海間の新幹線へ向けての布石 

 CRH2型新幹線の大量導入は、次に計画されている時速300キロ以上の高速列車開発のための大きな布石となっている。すでに、中国南方機車車両工業集団では、新型高速列車の研究開発に本腰を入れており、2007年度中に国産の時速300キロ対応の車両が登場することが発表されている。そして北京オリンピックが行われる2008年度中に、北京-天津間で時速300キロ運転が実現する。その後、建設が進む北京-上海、北京-広州の高速専用線に投入される見込みだ。

現在10時間かかっている上海-北京間が、専用高速線の建設が完成するころには5時間台になるとみられており、上海万博が開催される2010年には開通する。線路は設計段階で時速350キロが想定されており、安全性や信頼性も現在より格段に向上する。ちなみに、上海側の起点は、上海虹橋空港エリアに作られることがすでに決まっている。 

 今回のCRH2型の導入では、だれの目から見ても日本の技術が大きく貢献したことは間違いない。中国の報道ではそのことに触れられていないものの、これほどまでに中国の鉄道に影響を与えた点は、評価に値する。また、欧米の技術を導入して製造された別系統のCRH高速列車が、中国北部や南部で軒並み故障やトラブルに見舞われたのに対して、上海を中心に導入された日本の技術を導入したCRH2型は、とくに大きな問題なく運用されている点も注目される。 

これまでフランスのTGVと最高速度を争っていた日本の新幹線だが、ここにきて中国との技術競争が一気に始まったと言えよう。国土が広い中国だけに、高速鉄道が必要とされ、技術が成熟するのも日本よりもずっと早いと思われる。また、中国も世界一を目指して開発を進めることだろう。今後の展開が楽しみだ。

1964年に開通した東海道新幹線。東京オリンピックを控えた当時、日本どころか世界の鉄道輸送のありかたを大きく変化させた。折しも高度経済成長の波に乗り、日本の発展にもたらした貢献は多大だ。その新幹線が、あれから40年以上たった現在、今度は北京オリンピックや万博を控えた中国で活躍するとは、これもまた不思議な縁といえるだろう。(以上)

 


 

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