経済トピックス【2007年4月】

 

                

いよいよ組み立てが始まった中国国産旅客機
〜ARJ21型機〜

拡張工事が進む浦東国際空港

   2007年3月30日、中国で初めて、中国が核心技術を保有するといわれている民間国産旅客機ARJ21の組み立てが、上海飛機製造廠で始まった。 2008年3月に初飛行を目指すこの支線用のジェット旅客機だが、ついに実際の機体の様子が上海のTVなどメディアで登場した。実は、70年代に4発ジェット旅客機「運−10」号を製造している中国だが、諸事情で広く航空会社に採用されるには至らなかった。今回のプロジェクトは、航空業界関係者にとっても悲願であったことには間違いない。

 中国はこれまでもボーイング社やエアバス社などの航空機の部品製造を手がけてきた。2007年3月にも、次世代タイプのB−737型機の1000機目の尾翼部品を納入したばかりだ。しかし、このARJ21型航空機では、これまでの航空機の部品製作と異なり、中国が中心となって、中国国内の8つの航空製造企業と、国外19の企業とで合同で研究開発されたものであるという点だ。部品の製造は、2003年から上海・西安・瀋陽・成都の4箇所の主要製造工場で行われ、上海では、尾翼の製造と各部品の組み立て作業が行われる。当初、2005年度から組み立てが行われる予定だったが、重量オーバーなどの問題で、2007年までに延びてしまった。関係者の苦労が思いしのばれる。
 
 今回の航空機製造組み立ての舞台となっているのが上海飛機製造廠だ。このうち、上海では大場地区と宇宙開発で一躍有名になった閔行地区がその中心を担っている。大場では、エンジンの研究開発と機体の組み立てが行われているほか、閔行では顧客に対するサポートなども行われる。

● すでに中国国内で71機の受注

 ARJ21型機には、中国国内の飛行事情を考えた設計要素が多く盛り込まれている。中国国内では、空港の地理的条件や気候の変化が著しいため、沿海部の経済発展したエリアから、標高の高い高原エリア、さらに気温が高いエリアなどあらゆる条件での飛行が求められる。さらに、支線用なので、短い滑走で離着陸できることは必須条件だ。そのため、現在ある中国西部内陸雲南省や四川省など57路線すべてに適用される飛行条件をクリアした設計となっている。たとえば、観光地で有名な四川省の九寨溝なども航空機への要求が高い空港の一つで、ARJ21型機も飛行条件をクリアしている。

  今回のARJ21プロジェクトでは、これまでに50〜60億元の資金が投入されていることがすでにマスコミなどで明らかにされているが、公表されたデータによると1機の値段は2700〜2900万米ドルで設定されており、価格面でも他社に十分に競争力をもつ。ただ、一般に小型旅客機の場合、300機売れるとコストがペイできるとされているが、今回の開発での採算ラインはまだ明らかにされていない。

● 比較的ゆったりと設計された旅客機

  ARJ21型機は、定員が70人〜110人で設計されている。これは、中国国内の航空路線の80%でニーズのある中距離〜短距離で活躍できるサイズだ。機体の幅は約3.14メートルで、このクラスの航空機では比較的ゆったりとしているほか、ビジネスクラスのシートピッチで95センチ、エコノミークラスでも最低で80センチを確保している。これで、支線路線エリアでの座席の窮屈さが少しは解決されるかもしれない。

  また、頭上の荷物だなにも50センチクラスの大型荷物が収納できるスペースを確保した。さらに、貨物エリアも天井までの高さが1メートル近くあり、17.7立方メートル〜20.9立方メートルの貨物空間を確保、支線機としては十分なゆとりをもっている。


 航続距離の違いから、大きくわけて4タイプが考えられている。1200海里飛行可能な標準航行タイプ、さらにER型と呼ばれる1800〜2000海里飛行可能なタイプ、定期便用の客運型、さらに貨物専用の貨物型も準備されている。さらに、マッハ0.8程度の飛行速度で企業のビジネスジェット機としての運用も想定されている。

● 今後の生産計画

 2003年から中国国内4箇所で部品の生産が始まったARJ21型機であるが、2007年3月30日より部品の組み立てが上海で行われ、9月末には試験用の機体が完成する。さらに、2007年12月に飛行機の組み立てが完了したあと、のべ290回にわたる各種試験が行われ、2008年には中国の空に舞い上がる計画となっている。
 当面の計画では、年間5機の生産が予定されていて、2009年第三四半期には第1機が顧客に引き渡される計画となっている。さらに、2010年には年間11機、2011年には年間30機のスピードで生産される見込み。

● 国際市場への進出も視野に

 『解放日報』などの報道によれば、中航商用飛機有限公司の陳進副総経理のコメントとして、ARJ21型航空機を、中国だけでなく世界市場に売り込む意気込みを表明している。すでにアメリカ連邦航空管理局によるFAA認証を受けるための準備を進めており、ARJ21型機が世界の空を羽ばたく可能性も出てきた。さらに陳進副総経理は、2007年度中にもアメリカ市場からの注文を取りたいと目論んでいる。


● さらに大きな航空機の開発を目指して

 2007年2月26日、国務院総理温家宝は国務院常務会で、大型旅客機の研究・開発に対して、原則批准する立場を明らかにし、さらに大型航空機を製造するための会社設立に合意している。中国航空工業第一集団、中国航空工業第二集団もこの大型航空機製造会社に参加する意向を表明しており、さらに全世界からの投資を受け入れたいとしている。まさに国家プロジェクトなのだ。

 この場合、中国を中心とした国際協力を目論んでおり、投資に参加する側も、単なる飛行機部品の提供だけでなく、プロジェクト全体でのリスクも担うことで、一定の利益を享受できる投資方式が考えられている。

  日本にも国産旅客機として、かつてYS-11があった。しかし、今は現役を退いている。最近、日本の支線で運用されている某国製の航空機トラブルが相次いで発覚しているが、日本もそろそろ本腰で自国のニーズにあった航空機の開発・生産を行うべきなのではなかろうか。(以上)


 

[BACK]

dabanshi@osakacity-sh.com
Copyright 2007 Osaka City