経済トピックス【2007年2月】

 

 

「金猪宝宝」、歴史的な出産ブームが中国経済を押し上げるか

 

 2006年は結婚式ブームで、上海市だけでも約15万組が結婚した。そのため、中国全国的に外食産業やホテル産業、さらにブライダル産業が大忙しの1年だった。日系の大手ブライダル企業もあいつで上海に進出したほか、旅行会社も新婚旅行を狙った商品を発売したりするなど、力を入れている様子がよく分かる。

 

 そして、あけて2007年の猪年。今年は60年(十干十二支が一巡)に一度の金猪年で、この縁起のよい年に子供を産みたいというカップルが急増している。実質的には、最近の出産ブームは2005年ぐらいから徐々に始まっているのだが、中国では1981年〜1994年に生まれた第3次ベビーブームの人たちが結婚出産適齢期を迎えており、出生数が増えるのが必然的となっている。

 上海市人口と計画生育プロジェクト会議では、2007年に出産する新生児の数を13.7万人と予想している。これは2006年と比べると6千人の増加だ。ちなみに平成18年の大阪市の出生数は22823人(大阪市発表の数値)なので、人口の絶対数の違いはあるものの、その数がいかに多いか検討がつく。 

1.             産婦人科が大忙し 

 まず、顕著になってきているのが産婦人科での混雑だ。妊娠時の検診をうけるために、市内の病院では朝早くから予約のための列ができている。上海市内のある産婦人科病院でも、朝9時に検診のために並びにいっても、すでに番号札が200番近くになっていて、唖然としたという准ママたちの声が報道された。復旦大学付属産婦人科医院や瑞金医院産婦人科ではすでにベッドがいっぱいの状況が続いており、病室を4人部屋から6人部屋にして定員を増やしたり、中には10日前に予約しなければ病室ベッドすら確保できない事態となっている。

上海市衛生局では、上海市全体で5.62万床の産婦人科のベッドが確保されているため、増える妊娠・出産にも十分に対応できるとしているものの、少しでも質の高い医療を受けるために、限られた資源に集中してしまう傾向があるようだ。

現在は規制が入ったが、広東省や福建省の人たちの中には香港にまで出かけて、香港で出産を希望する人もいたほどだ。一時、香港の産婦人科病院が大陸からの出産希望者でベッド数が不足する可能性が危惧され、2007年に入って妊娠している大陸中国人の香港渡航に厳しい制限が加えられたのだ。

 

 さらに、中国ならではの習慣として出産後の1ヶ月は家で安静にする「月子」を迎えるのが伝統となっている。この期間中、母親は家事などを一切せず、そのため専門の家政婦「月嫂」を求める家庭が多い。乳幼児の世話から身の回りの世話をするため、一般に「アイさん」と呼ばれる一般の家政婦よりも高度なスキルと経験が要求される。専門の「月嫂」派遣センターも相次いで作られ、人気のあるところでは数ヶ月の予約待ちをしなくてはならないほどのところも出現し始めている。

 2.ベビー用品市場も急成長

  上海市の場合、高齢化社会に対応するために一人っ子同士の結婚では、子供2人まで生んでもよいことになっているが、共働きが多いため実質的には子供が一人というケースが多い。その場合、父母の両親4人で子供の世話をすることが多く、子供を対象にした消費を加速させる。

 衣料を例に見てみると、現在中国には0歳〜16歳までの子供たちは3.8億人おり、一般に毎年8億着の衣類が必要であるといわれていて、特にベビーブームの近年では子供服市場が年間10%の速度で急成長している。加えて、一人っ子が多い中国では、親のサイフの紐も緩みがちで、よいものをどんどん購入する傾向がある。

実際に、上海市内でも各地にベビー用品店がOPENしていている。大人よりも高い商品の価格に戸惑いを覚える人たちも多いようだ。新生児が生まれた場合、ベビー用品に費やされる消費額は、中国全国で1人当たり年平均2000元〜5000元(約3万円〜75千円ほど)とみられているが、実際には都市部の富裕層も居るわけだし、もう少し多いだろう。筆者の周りの新婚カップルを見ていても、選ぶ商品は中国国産のよりもむしろ欧米や日本などの海外からのブランドに人気が集まっている点は注目に値する。たとえば、粉ミルクにしても、最近でさえも毒粉粉ミルク事件で乳幼児が死亡した中国産ではなく、わざわざ有名ブランドの輸入品を取り寄せたりするなど研究に余念がない。

 興味深いのは、これらベビー用品店の多くが、産婦人科医院の周りに集中している点だ。例えば、上海市第一婦嬰保健院を例にとっても、粉ミルクの専門店やベビー用品店など20店舗あまりが集中している。大手百貨店を訪れてみても、ベビー用品や子供服売り場が急速に拡大している。10年ほど前、きのきいた子供服が手に入らなかったと嘆く日本人も多かったが、昨今の充実には目を見張るものがある。 

 そして、出産後の幼児教育に着目したビジネスも熱い。競争の激しい中国社会で生き抜くために、乳幼児の段階から子供に教育をつけようとする家庭が多い。2004年度の中国都市部の児童消費調査では、1人の幼児につき、年間3000元(約45千円ほど)以上のお金が教育に投資されていると報告されている。これを見越して、幼児教育センターの投資にも熱が入っている。ある大手の幼児教育センターでは、海外での幼児教育の経験を取り入れた幼児教育システムを導入し、20万元〜80万元(約30万円〜1200万円ほど)の加盟費を徴収して規模を拡大しているところもある。1年〜2年ほどで初期投資を回収してしまったところも少なくなく、上海での新しいビジネスとして注目されつつある。 

 ただ、昨今のベビーブームが生み出す弊害も議論され始めてきた。 政府に対しても、迷信にとらわれず、合理的な生育が行えるような環境を整備すべきだという建議も出されている。入学難、就職難、不動産の高騰・・・。未曾有のベビーブームに、将来を心配する声も聞かれ始めている。(以上)

 

 


 

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