経済トピックス【2007年1月】

 

 調和と安定ある社会を目指しての取り組み

スーパーの開店セールに押し寄せる上海市民

 上海市などの大都市では、人々の生活レベルはますます高まっている。マイカーが普及し、大型液晶テレビが売れるなど、高級贅沢嗜好に拍車がかかっている。上海市での20061年間での市民の可処分所得は10%以上の成長をみせ、最低給与の規準も上海市の場合で月690元(約10514円)から月750元(約11428円)へ上昇し、都市部での最低生活規準も月額320元(約4876円)に調整された。経済の発展が、そのまま人々の生活改善に寄与している形だ。 

 上海市では社会保障関連でも、2006年度はいくつか大きな改革があった。中国の場合、各地方政府が地方政府の事情に合わせた社会保障制度を実施しているが、上海市もその例外ではない。歴史的事情から、年金の支給を受けられない高齢者の市民が少なくない中、上海市では高齢者への年金の支給に力を入れ、あわせて公的医療保険を受けられる高齢者が増えた。その結果、上海市ではこれまでに加入できていなかった高齢者11.6万人が基本的な公的医療保険に加入できた。

さらに、画期的なことは、上海市内の小中学生・園児200万人を対象に、子供の医療保険制度が実施された。上海市では、これまで子供の公的医療保険制度が確立されておらず、全額私費で医療費を払っていた家庭も少なくなかった。また、出稼ぎ労働者たちも参加できる総合保険制度も始まり、市政府のデータでは276万人がすでに参加したという。 

 しかし、地方ではなかなか思うようにことが進んでいないことがわかる。中国社会科学院がまとめた『2007年:中国社会形勢分析と予測』によれば、現在中国の都市部と農村部との収入の格差は18倍にまで広がり、公務員の収入の格差でさえも、地域差が十数倍になっているとしている。そのため、報告書では調査した人の50%が自分の生活レベルが中程度以下であると認識しており、不公平感が根強いことがわかる。

 また、上海市ではほぼ当たり前になってきた公的医療保険も、中国全土で見てみると都市戸籍取得者の中でまだ60.1%が未加入となっている。さらに、医療保険や失業保険など社会保険に一切加入していない人も、大都市の市民で27.2%、地方の中小都市で51.4%となっており、都市間の格差も大きいことがわかる。農民に対する公的医療保険となると、制度の整備が始まったのがまだまだ最近のことで、まだ大部分の農民は公的医療保険を享受できていないのが実情だ。 

 ただ、注目したいのは多くの中国人が自分たちの国の将来について楽観的であるという点だ。これは、ともすれば悲観的になりがちな日本人とは少し違う。中国社会科学院社会科学所が20063月〜7月に行った全国調査で、90.5%が経済社会発展の状況におおむね満足している。「和諧と穏定」(調和と安定)を目指す中国政府にとって、国民にいかに満足な生活をおくってもらえるかが大きなキーポイントとなるといえよう。 

 今回の調査結果から、いま中国人がもっとも関心を持っている事柄がいくつか示されている。この中で、特にとりあげられているのは 1.医療費が高すぎる、信頼できる医師がなかなか見つからない、2.失業問題、3.収入格差3つの問題点だ。さらに、最近では教育費支出の増大も顕著で、家計に占める教育費は18.2%となっている。ちなみに、医療費ではその割合は11.8%で、ここ数年間で家計の支出が増大している項目のひとつだ。

 このように、政府も大都市と地方とでは明らかな格差があることを認識しているが、面積が広大な中国では、各地区によって市民の求めるものが必ずしも一致しているわけではないという点は重要だ。そのため、これからもその地方にあった制度が導入されていくことになるが、そのためには市民に対する公平感と機会を失ってはならない。

2007年からは、農村部の小中学生に対して、学校の雑費を免除する政策を開始する。年間140元〜180元(2500円前後)の雑費だが、これが農民たちの家計を圧迫していたからだ。教科書の無料配布制度も、農村部で始まっている。中国全国1.5億人の農村の小中学生が享受される制度だ。

2006年後半からは、加熱しすぎる経済にブレーキをかけるような政策が立て続けに出されてきた。これまでバブルの象徴ともされた不動産も、政府の強い規制で上海ではついに20061月〜10月までで新築マンションが3.9%下落するなど下落傾向が鮮明になってきた。

 2007年はさらにこの流れを受け継ぎ、「儲けられるものから儲けろ」の路線から、「社会全体の調和と安定」路線への転換がますます強く見られるという点は想像に難くない。(以上)


 

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