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経済トピックス【2006年12月】
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出稼ぎ労働者たちの意識変化
上海市内にて 上海を含め中国都市部の建設において欠かせないのが、いわゆる田舎から出稼ぎに上海にやってきている「民工」たちだ。彼らの殆どは農民出身で、建設業や家政婦、レストランの従業員などの90%は、彼ら民工で占められているほどだ。前回に続き、彼らの実態について触れてみる。 2006年11月に上海市の隣の省である浙江省が、「浙江省城市農民生活質量状況調査と研究」という報告書を出した。この中で、昨今の出稼ぎ労働者たちの実態と、その変化について分析されている。2005年に浙江省で働く出稼ぎ労働者の数は1783万人、そのうち浙江省以外の省から都市部へ出稼ぎにやってくる労働者の数は523万人となっている。今回はかれらの様子を報告書を通じてみてみようと思う。
1.なぜ都市に出稼ぎに出るか? 「民工」たちの出稼ぎに対する姿勢が、近年大きく変わっている。これまでは、農閑期に都市にやってきて、農繁期には田舎に帰るというパターンが多かった。今回の調査で明らかになったのは、都市への出稼ぎの目的が、単なる「金儲け」ではなく、「技術の取得」と「発展のチャンスを探す」というような積極的なものとなっている点だ。複数回答が可能な今回の調査では、71.2%が出稼ぎによって生活を改善するという答えであった一方で、自己を鍛え、技術を身につける、と答えた人が53.5%となった。対照的に、農閑期にお金を稼ぐと答えた人は23.3%しかおらず、出稼ぎ労働者の多くが、故郷に帰ることを考えず、都会での本格的な発展チャンスを探していることがいえよう。
2.大切なのは同郷たちのネットワーク では、この大都会で彼らはどうやって仕事を探しているのだろうか?やはり、親戚や同郷たちの紹介に頼るところが多いようだ。そのためか、上海の場合だと建築内装関係なら江蘇省出身が多いとか、材料販売なら福建省が多いとか、出身エリアによって、業種の区別化が見られる。出稼ぎ労働者を狙った就職詐欺事件も多く発生しており、当然そういった仕事探しには慎重にならざるおえない現実がある。 浙江省の調査では、46.6%の出稼ぎ労働者がこれら関係に頼って仕事を探していて、自分から求職した人はたった8.9%にすぎない。そのほかは、広告や就職紹介企業、新聞・ラジオ・テレビなどのメディアなどを頼りに仕事を見つけたと答えている。横のつながりの強さを改めて感じる。
3.増えている収入、だけど少ない娯楽 浙江省の場合、2005年の出稼ぎ労働者たちの年収は15364元(約23万円)となっている。これは浙江省の都市部住民の年収25572元(約38万円)と比較すると、明らかに低い。全国の出稼ぎ労働者の平均年収が11593元(約17万円)であることからすると、やはり中国沿海部エリアだけに、その水準が高いことが分かるが、やはり都市部住民との隔たりがあることは確かだ。 出稼ぎ労働者の職業をみると、自分で店をもって商売などをしている「個体戸」の収入が多く、年収3.5万元(約52.5万円)稼ぎ出している一方で、建設現場や家政婦などの仕事の場合、年収は1万元前後(約15万円)で、この格差は大きい。さらに、出稼ぎ労働者のうち、4.9%はいまだ浙江省が定める最低所得の規準を満たしておらず、収入は増えているとはいえ社会的な問題は少なくない。 また、お金を稼いでも、まだ稼いだお金を娯楽やレジャーに使うという水準にまでは達していないようだ。月収に占める娯楽費の平均は70元(約1000円)で、収入の5.3%となっている。娯楽の内容も、72.2%がテレビを見る、53.1%が寝る、38.3%が本や新聞を読む、街をブラブラすると答えた人も31.5%いた。まだまだこれら出稼ぎ労働者たちが、都市部の消費に大きく貢献するところにまで達していない。しかし、その数が多いだけに、今後の所得の伸び次第では、新たな消費層が生まれる可能性ある。
4.求められる労働環境の改善 毎年、春節間近になると多くの出稼ぎ労働者たちは田舎を目指す。と同時に、春節までになんとか未払いの給与を支払ってほしいと企業に抗議する労働者たちも増える。浙江省の出稼ぎ労働者のうち、16%はこれまでに賃金の未払いを経験しており、この問題が各地で深刻化していることが分かる。 では、なぜ賃金の未払いが発生するのか?その理由で一番多いのが、各企業が出稼ぎ労働者の流出を防ぐために、一部給与を差し押さえているケースだ。その割合は35.7%となっている。その次に、企業自身の営業実績がよくなく、支払えなくなるケースで24.2%、元受企業が下請け企業に給与を払わないために給与の支払いができないケースが14.5%、さらに給与を支払いたくないというかなり悪質なケースも11.2%あった。このように、社会的弱者とみられがちな出稼ぎ労働者たちの法制度の整備が急がれる。 住環境に関しても、まだまだ改善されなければならない。出稼ぎ労働者の33.7%は集団で宿舎生活をおくっているほか、工事現場にあるプレハブで生活している人は5%、また現場でそのまま寝起きして生活している人も3.3%いた。ただ、集団で生活する場合、その環境が非常に劣悪なケースも多く見られ、今回の調査でも55人が80平方メートルの部屋に押し込まれているということも報告されている。 その一方で、台所やトイレなどの設備がそろった住宅で生活している人も26.1%おり、その割合は意外と少なくない。 こうやって、出稼ぎ労働者の実態が、政府の報告書の形で明らかにされることは、中国ではかなり珍しいことといえる。それだけ、都市部では出稼ぎ労働者たちの存在が無視できない状況になっており、政府も出稼ぎ労働者たちを支援するための政策を行うことが、都市部の安定に欠かせないといえるだろう。(以上) |