経済トピックス【2006年7月】

 

根強い医療に対する不信感

〜偽医薬品問題〜

中国各地の病院はどんどん近代化されている

 現在、中国では医療の根幹を揺さぶるような事件が頻発している。中国人の生活に大きな影響を及ぼすだけでなく、中国に生活する外国人にとっても注視する必要がある事件といえよう。

 

 2006511日、医薬品を管轄する中国国家食品薬品監督管理局は緊急通知を出した。中国全国でチチハル第二製薬廠が生産するすべての医薬品の使用を禁止するという厳しい内容のものだった。513日には公安部門が乗り込んで、工場の封鎖を行っている。 

 広東省食品薬品監督管理局にチチハル第二製薬有限公司が生産した「亮菌甲素注射液」を使用して深刻な副作用が発生したという報告が出されたが200653日。これまでに分かっているだけで10人を超える患者がこの注射剤を使用して死亡しているほか、広東省では発表されているだけでも60人を超える患者が副作用で入院した。この患者の多くは、広東省の総合病院の患者だった。

「亮菌甲素注射液」とは、主に急性胆のう炎やウイルス性肝炎の治療に中国で広く使われる医薬品だ。さらにチチハル第二製薬廠は、もともとは中国でも有数の国営の製薬会社であり、医薬品生産に必要なGMP(薬品生産質量管理規定)も取得した、いわば「一流の製薬会社」だった。 

 今回のチチハル第二製薬廠の事件では、製薬会社が薬を製造する過程で、コスト削減のために工業用の原材料を使っていることが発覚、さらにこの製薬会社が生産する他の4種類の医薬品に関しても、同じように工業用に使われる原料が使われていたことも発覚した。工業用の原料を使うことにで、原料1トンあたり1200元ほどのコスト削減ができるという。その後の調査で、チチハル第二製薬廠が製造した医薬品が発見された地区は、上海も含めて全国各地に及んでいることも明らかになった。中国政府が定める正規の製薬会社の医薬品を購入していた市民にとって、その信頼が大きく揺らぐことになる。 

 

中国では昔から偽物の医薬品の問題は深刻だ。印刷技術が発展した昨今、医薬品は外からは簡単に本物か偽物か区別がつかない。さらに、輸入品の医薬品となると値段も高くなるため、犯罪組織にとっては格好の標的となる。

少し前に発覚した、たんぱく質など有効な栄養素が含まれていなかった粉ミルクの問題では、使用して栄養失調になる乳児が続出したほか、20066月には、江西省の各地で上海生物製品研究所や上海菜士血製品有限公司などのメーカーラベルを貼り付けた偽の人血清アルブミンが発見されている。日本でも最近に中国製の偽物バイアグラがインターネットで販売され、容疑者が逮捕されてニュースになった。いずれの偽物事件も巷の偽ブランドのカバンと違って、人間の生命に直接影響する問題だけに憤りを隠せない。 

 

     根強い医療への不信感 

 現在、中国の医療現場が抱える問題はかなり深刻だ。偽医薬品問題をはじめとして、市民の多くが医療への不信感を募らせているからだ。広州の『羊城晩報』の報道によれば、620人の広東人を対象に行った調査でも、56.1%の市民が病気になっても病院に行かないと答えているぐらいで、医療費の高騰、医療への不信感が与える影響が大きい。 

 その一方で、製薬会社と医師との癒着、薬代の高騰の問題が次々と暴露されて、利益重視の医療機関や企業の姿勢がチラホラしている。「回扣」と呼ばれる製薬会社から医師への「ワイロ」は、最近になってやっと規制が厳しくなってきた。しかし、日本などと違って他の業種より相対的に所得が低い中国の医師にとっては、このワイロが重要な収入源になっている場合もある。こういった一連の現状が、一般市民への医療への大きな不信感を与えていることは明らかで、今回のような大規模な偽医薬品事件は、さらに拍車をかけたものになったといえよう。 

 新華社の71日付けの報道では、チチハル第二製薬廠に対して、合計1920万元(約27500万円)の罰金と、『薬品生産許可証』の取り消し、さらに当該製薬会社が生産する129品目に対して医薬品としての批准を取り消している。

また、上海市では医薬品の安全などの問題を鑑みて、公的医療保険が適用される医薬品に対して、流通経路が比較的明確な上海製のものに切り替える動きも出ている。(以上)

 


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