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人民元切り上げへの評価と日本企業への影響
小幅な切り上げに複雑な米、再切り上げ圧力も
7月21日夜、中国人民銀行(中央銀行)は、人民元レートを事実上米ドルに固定していた為替制度を廃止。1ドル=8.2765元から、1ドル=8.1100元に2%切り上げるとともに、米ドル、欧州ユーロ、日本円の3大通貨に一定割合で連動すると見られる「通貨バスケット制」を参考にした管理変動相場制を採用したと発表した。
元改革の背景には本欄の第56回「最近の人民元切り上げ観測再燃について」で取りあげたように、とくにアメリカから「人民元を実勢よりも安いレベルで米ドルに固定していることが貿易不均衡の原因」との批判が一層強まっていたことがある。また、人民元切上げを見込んだホット・マネーの流入によって外貨準備が急増。このまま人民元レートの調整を先延ばしし続けた場合、高インフレを招きかねない国内事情もあった。
今回の元切り上げに対して、対中圧力を強めていた米議会をはじめ、ブッシュ米大統領やスノー財務長官らも歓迎の意を表明。米連邦準備制度理事会(FRB)のアラン・グリーンスパン議長は、「改革の第一歩」と評価した。
しかし、人民元の切り上げ幅が2%と、小幅にとどまったことに対する米産業界の不満は根強い。昨年1年間の米貿易赤字は過去最大の6177億ドル(約69兆円)で、このうち対中赤字は1629億ドル(約18兆円)と実に4分の1以上。さらに今年の対中赤字は、昨年を30%以上も上回る勢いで増え続けているからだ。
米政府は中国政府に対し、水面下で10%程度の切り上げを要求していたこともあり、すでに再切り上げを求める動きが出ている。こうしたなか、一部の海外メディアは「2%は初期値であり、今後の調整に向けた第一歩である」と報じた。
これ対して、周総裁は出演したテレビ番組で「人民元レートの変動幅は合理的だ。これからも合理的でバランスの取れたレベルで、基本的に安定を保持する」とコメントし、欧米からの再切り上げを求める声をけん制。中国人民銀行のスポークスマンも、「為替制度の変更に伴い調整したものであり、今後再び切り上げを行うことを意味するものではない」と語っている。
日本経済への影響は軽微とする見方が大勢
日本の閣僚は、今回の人民元改革に歓迎の意を表した。谷垣財務相は「アジアの通貨制度の上からも相当大きな意味を持った決断だ」と評価。竹中経済財政相も「大きな一歩だったと後から評価される改革ではないかと思っている」と述べた。
産業界もおおむね好意的な見方だ。経済同友会の北城代表幹事は「今回の切り上げは大変歓迎すべきで非常にいいステップだ」と評価した上で、日本経済への影響については「2%と幅も小さく、今回の切り上げによる影響は限定的だろう」とコメント。日本経団連の奥田碩会長は、「今回の決定は、中国経済のさらなる国際化へのステップであり、評価したい」と語っている。
確かに今回の元改革では「切り上げ幅が2%と小幅だった」ことと、「通貨バスケット制を参考にした」ことによって、日本経済への影響は軽微とする意見が大勢を占めている。バスケット制において、ユーロ等が対ドルで不変であると仮定すれば、ドル―円で円高になった場合、人民元は対円では必ず安くなるからだ。
ただし、「今後、切り上げが続いて2けた程度の切り上げになれば、日本経済や東南アジアの経済は相当な影響を受けるのではないか」(奥田会長)との見方もある。中国経済の購買力が高まることによって、原油や鉄鉱石などの原料、穀物などの価格が高騰する可能性がある。また、技術力のある日本企業を買収する動きも活性化するだろう。さらに、中国に進出している日本企業にとっては、中国の生産拠点の輸出競争力の低下といった問題もある。
一方で日本の輸出企業や現地進出した企業が引き続き利益を享受するためには、中国経済の安定した成長が不可欠だ。その意味で、過熱する中国経済をソフトランディング(軟着陸)に導くためには、2%程度の切り上げでは不十分であることも事実。今回のようなわずかな切り上げでは、人民元切り上げを見込んださらなる投機的資金の流入を防ぐことが難しいからだ。
このように、日本経済にとって、功罪両面がある人民元の切り上げだが、中期的な視点で見れば、バスケット制によって対円レートの変動が緩和されることになるため、日本にとって中国がいっそう近い国になることが期待できる。ともあれ、これからも人民元の動向から目が離せない状況が続きそうだ。
なお、今回の人民元改革のポイントは以下の通り。
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従来の米ドル単一通貨へのペッグ制を取らず通貨バスケット制を参考に、市場の実勢に合わせた為替相場を基礎とする。
- 人民銀行は各営業日の取引後に、為替レートの終値を発表。次営業日の対人民元の取引の中間値とする。
- 7月21日の終値は1ドル=8.11元とする
- 毎日の米ドルの対人民元取引価格の変動幅は、前日終値の上下0.3%以内とする。米ドル以外の通貨の対人民元の取引価格の変動幅は、人民銀行が発表する同通貨の取引の中間値に対する規定の比率内とする。
以上
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