経済トピックス【2005年5月】

 

最近の人民元切り上げ観測再燃について


高まる米国からの圧力

 先月、ワシントンで開催されたG7(先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議)で、人民元切り上げ問題が議論された。また、4月の後半には米国政府・議会が中国に対して人民元改革に対する強硬な発言を繰り返すなど、人民元切り上げに対する関心が高まっている。

 19日、ブッシュ米大統領は、中国が通貨変動制に向けて暫定的な措置を検討している兆候があると指摘。米政府としても、できる限り早急な対応を求める見解を示した。

 21日にはスノー米財務長官が、「米国は中国が人民元のドルペッグ制度を廃止する準備ができていると信じている」と発言。中国への働きかけについても、「非常に進展があった。行動する時期、人民元を(ペッグ制廃止に)移行させる時期だ」と述べた。

 米連邦準備理事会(FRB)のグリーンスパン議長も同日、「人民元を対ドルでペッグさせていることは、中国経済に著しくマイナスの影響を与え始めている」とした上で、「彼らがいつ動くか予測することはできないが、いずれ対応すると確信している」と語っている。

 一方、中国の李肇星・外相は、中国は米ドルに固定している人民元政策の変更を決めるうえで、「中国の実際の状況や、中国や隣国の利益、さらには世界全体の利益も考慮に入れる」との見解を示した。また、23日には中国人民銀行(中央銀行)の周小川総裁が、人民元の改革に政治面や技術面で深刻な障害はないが、改革の時期はまだ検討中である、と述べている。


短期的な切り上げを否定する見解も

 このように中国当局者らは、具体的日程は示さないものの、中国が人民元のペッグを緩和する準備を一段と整えていることを示唆。また、中国の政府系エコノミストが「景気抑制につなげるためにも、中国は年内、もし可能ならば上半期に人民元相場を調整するべき」との考えを示したことなどから、国際金融界では「中国が早ければ今年下期、遅くとも来年初めに人民元を切り上げる」との見方も出ている。

 しかし、その反面で、短期的な人民元切り上げに対する期待を牽制する動きもある。中国外国為替管理局(SAFE)の魏本華・副局長は24日、海南島で開催されているボアオ・アジア・フォーラムで、中国政府には為替レート調整について「タイムテーブルはない」と指摘。「われわれは、前向きにしかし慎重に人民元相場制度の改革速度を加速するが、そのタイミングは適切に決定される」とし、「明日に人民元の10%の切り上げは期待することはできない。それは中国と他の国にとって打撃となる」と、短期的な人民元切り上げはない点を強調した。

 25日のニューヨーク外国為替市場では、相次ぐ中国当局者発言を受け、人民元の早期切り上げ観測が強まったことが円を支援。対ユーロで2カ月ぶり高値、対ドルでも1カ月ぶり高値に上昇した。一部で中国人民元の柔軟化についてのレポートが出ていたほか、ゴールデン・ウィーク中に中国元が切り上げられるとの思惑もあり、これらが円買いの一要因になった模様だ。また、中国の複数の銅トレーダーによると、連休中に人民元が切り上げられる可能性があるとの観測から、同国の銅輸入業者銅の輸入を見送っていると指摘している。

 2004年末の外貨準備は6099.32億ドルとなり、2003年末より2067億ドル(51.3%)増という大きな伸びとなった。その最大の原因は人民元切上げを見込んだホット・マネーの流入に他ならない。

 これを食い止めたい一方で、外圧に屈する形での切り上げは、中国政府としてはメンツが立たず、また、今回市場の予想に応じて切り上げを行った場合、再び不均衡が広がった時に「また切り上げがある」との予想に確信をもたせ、現在以上に投機的資金の流入が発生するようになってしまうことになる。

 そのため、人民元切り上げは、温家宝総理が「いつ提起するか、どのような方法を採用するかは、おそらく不意を突くような形となろう」と述べているとおり、誰も予期しない時の実施が模索されてきている。このように中国政府としては非常に難しい状態に陥っている。

以上


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