経済トピックス【2004年10月】

 

"上海ラーメン戦争"勃発の兆し

− 中国におけるラーメン店の巨大チェーン構築の可能性 −


広がる上海の日式ラーメン市場

 90年代の半ばから約10年間続いた日本のラーメンブームはようやく収束したようだが、上海では日式(日本風)ラーメンのマーケットが急拡大。すでに"ラーメン戦争"の前哨戦が始まっている。
 現在、上海で日式ラーメン店を展開する企業は15社以上あると言われているが、名実ともにナンバーワンの座を走り続けるのが『味千(あじせん)ラーメン』だ。准海路や南京東路など一等地を中心に市内に10店舗展開し、多くの店で地元の中国人が行列を作る繁盛ぶりを見せている。
 『味千』は熊本市に本社を置く重光産業が日本や東南アジアで展開しているフランチャイズチェーン。99年の9月に上海1号店をオープンし、着実に店舗網を拡大してきた。30種類のラーメンのほかに、焼鳥や枝豆、冷や奴といった居酒屋メニューを約40種類そろえ、「安価で日本料理が楽しめるラーメンレストラン」という新しい業態を確立。これが上海の若い世代を中心に支持を集め、ヒットにつながった。今後は郊外への出店も積極的に進め、2005年までに60店舗の展開を計画しているという。

味千の一人勝ちに「待った」をかけるのは…

 こうした『味千』の独走状態に一石を投じたのが、今年2月、ビジネス街の虹橋地区に1号店をオープンした『78(チーパー)一番ラーメン』だ。運営するのはラーメン専門店『一風堂』を日本全国に25店舗展開する力の源カンパニー(本社:福岡市)と、上海の有力レストランチェーンである小南国との合弁企業。2号店、3号店を相次いで出店し、10月には早くも4店舗目をオープンする。
 『78一番ラーメン』が目指すのも上海市内での多店化だ。年内にさらに3〜4店舗を出店。来年は10店以上の出店を目指し、その後はフランチャイズ形態での急速展開も視野に入れている。計画が順調に進めば、今後、3年ほどで50店舗体制を確立する勢いだ。

中国だからこそ期待できる巨大チェーン化

 日本でラーメン店を展開する企業の中には、株式を公開している企業が数社あるものの、「これがスタンダード」といえる巨大チェーンは生まれていない。ラーメンという料理自体、嗜好性が高く、「こだわりの味」「自分だけのお気に入り」「職人・達人」といったイメージが強いため、「可もなく不可もなし」という印象があるチェーン店での展開が難しいのだ。しかし、中国ではラーメンに対するイメージは固定化されていない。「ラーメン=高い嗜好性を持つ料理」という図式自体が存在せず、だからこそ、『味千』の“ラーメンレストラン”という日本にはない提案が受け入れられたのだ。
 味についても、まだ基準はできていない。そもそも多くの中国人は、日本の多様化、深化したラーメンを知らないからだ。現在は「味千」が上海における日式ラーメン店のデェファクトスタンダードになろうとしているが、これは1971年、日本に初進出したマクドナルドの味が、日本人にとっての「ハンバーガーのスタンダード」となったことに似ている。
 また、中国人のチェーン店に対するイメージは日本の消費者とは大きく異なる。「チェーン化しているのだから味がよいのだろう」「接客などの品質も高いに違いない」「衛生面でも安心できる」といったプラスの印象を持つ人が多いようだ。
 さらに多店舗化による広告宣伝効果も見逃せない。上海の人々の最大の娯楽はウインドウ・ショッピング。上海ではショッピング街の開発が急速に進んでいるが、東京に比べれば圧倒的に少ない。そのため十数カ所の主要なエリアに店舗を開設すれば、看板やロゴの刷り込み効果によって、高い広告効果を期待できるのだ。
 このように、これまでの日本では実現しなかったラーメン店の巨大チェーン構築も、中国においては十分に可能性があることがわかる。「味千」と「78一番ラーメン」の出店競争は、「将来的に中国全土における日式ラーメン店のスタンダードとなる」という巨大なビジネスチャンス獲得を競い合う戦いとも言える。
 もちろん、ナンバーワンの座を狙うのは2社だけではない。すでに上海に進出している企業の新規出店に加え、新参組も続々と未開拓市場を目指して動きだしている。北陸を中心に『8番ラーメン』を展開するハチバンは年内にも1号店を立ち上げる予定。『餃子の王将』などをチェーン展開するイートアンド(大阪市)は、早期10店舗の展開を目指し、12月に『よってこや』の上海フランチャイズ1号店を浦東エリアにオープンする計画だ。
 この他にも、日本の有力店、人気店が着々と上海進出の準備を進めており、競争の激化は確実。日本ではなしえなかった夢の実現を目指して、上海のラーメン企業各社は今後、まさに戦いの正念場を迎える。

以上


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