中国の商標権問題
中国では2001年12月のWTO加盟に伴い、知的財産関連法(「特許法」、「商標法」、「著作権法」)の整備が行われている。中でも中央政府主導による模倣品の摘発強化方針が打ち出され一定の成果が挙げられてはいるが、中央政府の政策や規定が地方政府に十分浸透せず、依然として模倣品による知的財産権侵害が蔓延しているのが実情である。
一昨年8月にヤマハ発動機が、同社のニセモノバイクを製造している天津市の企業を提訴したケースや、最近ではトヨタ自動車が自社に似た企業マークを使用した自動車を製造したとして浙江省の自動車メーカーを提訴するなど、模倣品の存在は外国企業にとって非常に影響の大きい問題となっている。
そこで今回は、中国での模倣品の実態と中国ビジネスにおける商標権の重要性について述べてみたい。
■中国は商標大国
中国は今や世界的な「商標大国」となっている。例えば、2002年における商標登録出願件数は約37万件に上っており、その内、約1割強が海外からの出願で、外国企業による商標出願が活発になされていることが窺える。
もともと「商標」というのは、その企業や製品に対する営業上の信用と結び付くことでブランドイメージの形成に役立っている訳であるが、中国ビジネスにおいても市場におけるブランドを確立するにあたり、登録商標の確保が必要であるとの認識が定着してきていると言える。
その一方で、著名な外国企業が中国において商標権を侵害される事件が急増している。中国で商標権に関する紛争処理を担当する中国国家工商行政管理総局の統計によれば、2002年における商標権侵害事件の件数は約3万9千件(前年比7割増)におよび、罰金金額は約2億1千万元(同6割増、約29億4千万円)にも上っている。(2003年はいずれも前年実績を上回る見込み)
■商標権侵害のパターン
商標権侵害のパターンとしては、先ず1つ目に違法なコピー品に無断で著名企業の商標と同一または類似する商標を付す『模倣品(コピー品)被害』のケースである。〔模倣品には意匠権(デザイン)や著作権を侵害するものもあるが、最も多いのが商標権侵害である〕
安価な模倣品が市場を席巻すれば、真正品の売り上げへのダメージや信用の低下、粗悪な模倣品によるブランドイメージの低下等に繋がる。何らかの対策を講じなければ模倣品業者は安心して製造に専念し、ますます被害は拡大するという悪循環に陥りかねない。
最近の中国は世界的な模倣品の製造・流通・販売拠点(上海にも模倣品を専門に扱う市場が数箇所ある)となっており、効果的な対策の必要性が高まっている。
商標権侵害の2つ目のパターンとしては、著名企業の商標と同一または類似する商標を他人が中国において無断で商標登録してしまうというケースである。(例えば、合弁事業の中国側パートナーや取引先中国側企業が、勝手に商標を登録してしまうケース) その場合、本来の商標を有している外国企業側は中国においてその商標を使用できず、関係当局に自ら商標登録の出願をしても登録を拒絶されることになる。その対策としては、自らも迅速に商標登録を行い、相手方の商標に対しては行政上・司法上の各種手段を駆使して、訴えていくしかないのが実情となっている。
■商標権保護への法整備
中国では昨今、立て続けに知的財産保護に関する法律が発布されている。2001年の全人代常務委員会にて「商標法(2001年12月1日施行)」が採択され、翌2002年には国務院から「商標法実施条例(2002年9月15日施行)」が制定された。そして昨年4月には国家工商行政管理総局より「馳名(著名)商標の認定及び保護規定(2003年6月1施行)」が新たに制定されるなど、商標権に関する制度が大きく改善されることとなった。今後は外国企業にとっても商標に関する権利保護の手段が整ってくるものと思われる。
以上
2004年1月
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