経済トピックス【2010年2月】

 

子供がつくられない?!上海人家庭の台所事情

 1980年以降に生まれた世代が、家庭を持ち、子供を育てる時期に入っている。彼らは一人っ子世代であるだけでなく、上海の経済が急速に発展してきた時期に大人になった世代でもある。一見、生活環境にも恵まれた生活をおくっているように思えるが、現実は厳しい。急騰した上海の不動産、積み重なる子供への出費が家計を圧迫し始め、結婚しても子供が産めない状態に追い込まれる家庭が少なくないのだという。2010年、上海市の議会に相当する「両会(上海市人民代表大会と上海市政治協商会議)」でも、新しい社会問題として討論された。

○収入が足りない?!

 最近の上海では、独身時代にはそこそこ収入と貯蓄があり、結婚しても共働きでなんとかやっていけ、車も買えて海外旅行もできるようになったという世帯が多い。ところが、いざ子供が生まれてくると、一気にその生活が崩れてしまうというのだ。上海のように消費で娯楽を楽しむ都市生活の場合、80年代以降に生まれた若者にとっては、この選択は苦しいという。

 上海でもマスコミが家計をシュミレーションしている。例えば、標準的なサラリーマン世帯で計算した場合、共働きで月8000元程度の手取り収入があったとしょう。今の上海人の多くのマンションは、持ち家であることが多いので、住宅ローンを抱えており、一般的にローンは月額2500〜3000元程度だ。さらに、交通費や電気・ガス・水道代・食費などの経費が月2500元程度とすると、残り2500元程しか残らない。もし、子供がいなければ、海外旅行や娯楽などにまわせたお金だったが、子供ができてしまうと一転してしまう。

 例えば、共働きで子供の面倒をアイ(家政婦)さんなどに見てもらうことになると月に1000〜2000元は必要だし、私立の有名幼稚園に通わせようと思うと月に2000元前後はかかる。そのほか、保険や粉ミルク代、子供の服飾費やピアノなどの習い事なども加えていくと、とても2500元の範囲では収まらない。そうした状態を、「子供の奴隷になった」という意味で、「孩奴」と表現する人たちもいる。

 さらに、共働きの場合、上海ではまだ3歳までの子供を預ける施設はほとんどないし、小学校にあがっても、上海では親による子供の送り迎えが一般的だ。そのため、夫婦が残業して自分の仕事の時間をつぶすことはまず不可能になる。地方から上海に働きに来ている夫婦の場合、親や親戚の助けもないので、この状況はさらに厳しくなる。上海の帰宅ラッシュが、日本よりも早いのは、そういった事情とも関係があるのだ。

○子育てに対する意識改革が必要

 また、上海の育児の専門家からは、1980年代以降の世代では子育てに対する意識に問題があるという声もある。なぜなら、彼らの父母の世代は、貧しいながらにもしっかりと子供を育て上げることができていたからだ。つまり、子供ができて家計がやりくりできなくなるのには、社会的要因よりも、個人の生活習慣等の変化に関係があるのではないか?という考え方だ。例えば、今の若い子育て世代には、物質に対する欲望が強く、「いい子育てができる=いいモノを持っている」といった短絡的な考え方が根底にあるのではないか、というのだ。さらに、子供に対して、自分たちができなかった自己実現を過度に求める傾向があり、それが習い事や塾に子供を通わせる原動力になっているのだという。
 経済的発展に忙しく、子供の家庭教育に十分に時間を費やすことができなかったツケが、これからやってくるのではないか、という懸念もあり、幼稚園などでは父兄に正しい育児概念を教え込むクラスを設置するところも出ている。日本の高度成長期と同様の社会現象が、上海でも起こっているのだ。 (以上)


 

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