経済トピックス【2009年12月】

 

12月22日の地下鉄事故がもたらしもの

 12月22日の早朝、上海地下鉄1号線の中山北路駅〜上海火車駅で発生した地下鉄の衝突脱線事故に関して、地下鉄の安全性に対する不安が市民の間で言われるようになった。これまで上海の地下鉄全線で、車両のドアのトラブルや電気系統の故障などで止まることが多く、今回の事故をうけて、上海市の韓正市長も記者会見で上海市内の地下鉄の管理システムが、路線の急拡大に追いついていないとコメントを出している。

施設の老朽化
 上海地下鉄1号線は、上海でもっとも古い地下鉄路線だ。といっても、走り始めてまだ16年程度。日本の地下鉄と比較すれば、まだまだ新しい部類に入るだろう。しかし、慢性的な車両不足と、ラッシュ時に集中する利用客の問題が根本的に解決されていない。最近、列車の更新も進んできたが、それでも予備列車も日常的に運用に投入する状態には変わらないという。また、過密運転に電力設備の負荷が極限状態であることもたびたび報道されている。
 12月22日の脱線・衝突事故は、早朝に起きた電気関係のトラブルが回復し、正常ダイヤに戻す過程で発生した。もともと上海の地下鉄にもATCなどの列車を保安制御するシステムが導入されていたが、これらがなぜ機能しなかったかが今後の原因解明の焦点となってくるはずだ。報道されているような運転手の信号の見落としぐらいでは、衝突が起こらないシステムであったからだ。

恐怖感
 今回の事故は、当局の対応のまずさを露呈してしまった。事故を起こした150列車に乗車していた乗客は、一部の体調を壊した人を除いて最高4時間近く列車のなかに閉じこめられた状態だった。救援列車の到着が大幅に遅れたことも指摘されている。幸い、ぶつかった列車が回送列車で、双方の列車の損傷がすくなく済み、空調や電気などには支障がなかったものの、それでも暗いトンネルのなかで長時間にわたって閉じこめられたことに、恐怖感を感じた市民が少なくない。
 上海地下鉄1号線・2号線・8号線が交わる人民広場駅は、上海地下鉄でも有数の乗り換えターミナルだ。しかし、その割にはプラットホームが狭く、毎日の通勤時間帯には乗降客でごったがえす。確かに、連絡通路の整備などここ数年での変化は大きいが、増える乗客数には追いついていないという現実は否めない。こうした地下空間の混雑で、万が一アクシデントが発生した場合、どのように対応するかは大きな問題となる。特に、上海は外国人だけでなく、中国各地から人が押し寄せている。通常のマニュアル通りには行かない難しさが多々ある。今回の事故でも、一部の乗客が地下鉄の対応のまずさに抗議して事故列車から下車しようとしない、というような人為的はハプニングもあり、処理に手間取ったとされている。

今後の課題
 市内あちこちで地下鉄工事が行われている上海市。2009年末まもなく9号線、11号線などの路線が開通する。上海市では、総延長570キロに及ぶ地下鉄網整備を進めている真っ最中だ。しかし、1号線の1区間がトラブルを起こしただけで、市内の交通は大混乱し、課題が次々出てきている。上海地下鉄でも日頃、訓練を行っているようだが、それ以外にもどのように迅速に市民に交通情報を伝えるのか、移動できなくなった市民をどのように輸送するのか、そしてどのように故障したことを乗客に納得させることができるのか、大きな課題だ。
 悪いことは重なるもので、上海地下鉄1号線では事故が発生した同日夜にも、電気設備から烟が出るトラブルが発生し、列車が止まっている。 (以上)


 

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