経済トピックス【2009年11月】

 

動き出した上海崇明島の開発

上海長江大橋の橋脚

 上海崇明島は、長江の河口に浮かぶ島で、中国では台湾島、海南島に次ぐ大きさを誇る。618年に漁民が長江の中州に島ができていることを発見して、崇明島と名付けられた。文革時代にはこの崇明島で労働をした上海市民も多い。その当時、一度労働に出ると20年ほどの歳月となるため、崇明島には特別な思い入れを持っている市民も少なくない。
 そんな中、2009年10月31日に上海長江大橋と長江トンネルが開通した。これまで、上海本土と崇明島はフェリーや高速艇によって結ばれていたが、天候によって欠航することも少なくなく、崇明島の発展に大きな障害となっていた。それが今や高速道路経由(通行料50元)でたった20分で結ばれるようになった。

●東灘の自然保護区
 崇明島といえば、東灘の写真がよく登場する。崇明島を代表するエリアとも言え、朝日が非常に美しい。1998年に中国国家クラスの自然保護区として指定され、渡り鳥の飛来地として多くの研究者も訪れている。保護区になる前は、漁民たちが魚を捕ったり、食用に野鳥をとったりしていたが、今では一切禁止になった。
 東灘は見渡す限りの湿地帯で、目の前に水平線が広がる景色は圧巻だ。遠くには水牛が放牧されていることもあり、ここが上海であることを忘れさせてくれる。ただ、多くのエリアが立ち入り禁止になっており、許可がなくては保護区には入ることができない。

東灘入り口に続く車の列 記念撮影にあつまる観光客

●存在意義が高まった長興島
 上海浦東から高速道路で崇明島に抜けるとき、まずは長興島を経由することになる。実は、この長興島にも近年注目が集まっている。もともと、上海万博エリアにあった造船工場がこの島に移転し、海洋船舶や造船基地としての発展が進められているからだ。
 そして、市内に住む市民にとっても恩恵が大きい。慢性的な水不足問題を抱えている上海にとって、新たな水源探しが大きな課題だったが、長興島にある青草沙ダムは、比較的汚染の少ない水質のダムとして整備が始まっていて、すでに上海本土との水道管が結ばれている。浦東新区など青草沙ダムの水道水の恩恵を受ける地区は多いはずだ。黄浦江に変わる新しい水源として期待されている。

東灘の芦 はるか地平線まで続くようだ 山羊肉は崇明島名物
上海科技館から出る崇明島行きのバスに並ぶ市民

●押し寄せる観光客に対応できず
 上海地下鉄2号線の上海科技館から崇明島へ路線バスが走っている。橋が開通して1ヶ月になった11月末でも、まだ平日でさえ長い行列ができているほどだ。開通当初は、押し寄せる観光客に対応できず、急遽臨時バスを増発した。自家用車も相変わらずすごい。長江大橋を渡っていると、高速道路にもかかわらず、車を路肩にとめて記念撮影している人が多いのには驚いた。
 取材に行った東灘に近いあるホテルの話では、橋開通前はほとんど宿泊客がいなかったのに、橋開通後のホテルの稼働率は150% という状態。特に、以前に増して政府高官などが視察にやってくるようになったという。東灘の近くにある団体客など対応できる食堂も超満員で、お昼時に行くと、午後2時以降しか席がないというありさまだった。橋の袂に近い陳家鎮では、観光客の多さに、食材すら手配できないこともあったようだ。
 そして何よりも悲しかったのが、観光客による自然破壊だ。崇明島は筆者も過去に自転車でツーリングに出かけたことがあるが、今やその当時の静けさは一切なくなっている。東灘への入り口は大変な交通渋滞となり、団体客が落としていくゴミで路肩は荒れていた。駐車場がもともとなかったのだが、今回の騒動によりトイレや土産物売り場、大型駐車場も兼ね備えた施設が2010年3月にも建設される予定のようだ。果たしてそれで本当に自然保護ができるのか、疑問が残る。
 ただ、今後は増えすぎた観光客や自動車の制限をするため、東灘エリアに乗り入れるための登録制度を将来行う計画で、インターネットで登録してから通行証を発行するシステムも今後開発するようだ。

一面に広がる野菜畑 海も近い

●崇明島の青写真

 崇明島のもう一つの役割として期待されているのが、上海市−崇明島−江蘇省を結ぶ交通網の整備だ。沿海高速道路が江蘇省の南側まで延びてきており、これが崇明島とつながれば、あたらしい物流ネットワークが完成する。上海を中心とした2時間内交通エリアが拡大され、特に江蘇省蘇北エリアの人件費が上海よりも安いなどの要素も考えると、今後周辺エリアが発展する可能性は高い。
 ただ、崇明島自身のGDPが、上海市全体に与える貢献度は1%程度にすぎない。そういった観点からも、急速に産業を発展させるよりも、自然環境の保護を重視し、農業やレジャーを発展させることに重点が置かれることだろう。まだ公式には明らかにされていないが、島に競馬場を設置する動きもあるという話も聞いた。
 崇明島は、上海エリアで最後まで開発されなかった地域として、その存在価値が大きい。将来は浦東から地下鉄がつながるという計画もある。果たして、今後どのように発展させていくのか、その将来像に益々興味を感じる。(以上)

○筆者注:ここでいう150%は、客室が昼間も稼働し、さらにエキストラベッドなども使った状態のことを指している。


 

[BACK]

dabanshi@osakacity-sh.com
Copyright 2007 Osaka City