経済トピックス【2009年5月】

 

「上海2つの中心」計画、上海の新たな発展の契機になるか?

 4月29日に発表された『国務院関於推進上海加快発展現代服務業和先進製造業建設国際金融中心和国際航運中心的意見』は、上海市の将来の発展を見据える上で非常に重要な文書として注目されている。ここでは国家プロジェクトの一環として、2020年までに上海市を国際金融の中心と国際航運の中心として整備し、上海を中国の経済力と人民元の国際的価値にふさわしい都市にすることを目標としている。
 今回発表された文書は、中国国務院が初めて文書の形で正式に「上海2つの中心」について発表したもので、上海市にとっては、過去の浦東開発プロジェクトに次ぐ影響力の大きな計画とも言われている。これにあわせて、上海浦東新区と南匯区の合併によるいわゆる「大浦東計画」も進んでおり、このニュースが入るや否や、南匯区の不動産価格が上昇したほどで、影響力と期待の大きさがうかがい知れる。

●国際金融中心

 1930年代当時、上海はすでに世界の金融センターとしての機能を保持しはじめていた。外灘エリアのオールド建築は、その当時を彷彿とさせる。
 そして、今、世界的な金融危機で、世界の金融構造が変革を迎える中、金融危機後の経済発展に中国は着目し始めている。
 すでに、90年代ごろから上海に国際金融センターを作る構想があったが、すでに世界の経済状況が大きく変化しており、新たな計画を立てることが必要となってきた。この時期に、上海を金融の中心におくことで、長江デルタエリアや長江流域の発展を促し、最終的には中国全国に幅広くサービスする環境を整えることになる。
 このため上海の当面の任務としては、金融サービス業のさらなる対外開放とレベルアップ、金融システムの安定と監督強化を行う。また、期待されているのが上海での新しい金融商品の開発だ。今後上海では順次、債権や先物などの取引も行われる見込みで、手始めとして越境貿易の人民元決算の試験都市として上海市が指定された。就職難の昨今、国際金融中心設立に必要な人材確保のほかにも、将来的な雇用拡大に期待が集まっている。
 ところで、上海を取り巻く環境は年々厳しくなってきている。上海市統計局によると、2009年第一四半期のGDP増加率は3.1%で、全国平均の6.1%を大きく下回った。金融危機での影響で外需から内需への転換が迫られており、そのためにも国際金融中心の建設は今後の経済発展に対して重要な足がかりになると考えられている。

●国際航運中心

 今からさかのぼること13年前、1996年1月に中国国務院は上海を中心に江蘇省・浙江省を両翼とした上海国際航運中心プロジェクト構想が発表されている。また、上海では、中国で始めて保税港区として機能する洋山港保税区が設置された。こうしたインフラの整備はめざましいものの、まだまだ釜山やシンガポールなどの競争相手と比較しても競争力が十分ではない。そこで、上海で国際航運発展のための総合試験エリアを建設する構想が出ている。これが今回の国際航運中心計画でも重要なコンテンツとなっている。

 さらに、物流ネットワークの再構築も考えられている。今後、港湾の整備に関しては上海だけでなく、長江デルタエリア一帯の総合的な発展が計画されている。中国の場合、一番理想的な港湾と鉄道の連携に関しては、貨物全体のほんの一部にすぎない。たとえば、上海では長江デルタエリアの貨物の85%が陸路を使っており、道路網への比重が増えすぎて、交通ネットワークを圧迫している。このため、エネルギー節約のためにも、水路と鉄路に比重を移すことが急務となっている。上海も含めた長江デルタエリア各港との交通網の整備が急ピッチで行われることになる。巨大物流ネットワークの整備が、物流コストの減少につながり、上海港の地位が量から質への転換を実現したいとしている。
 国際航運中心の整備は、必然的に上海に大量の物資や資金が集まることを意味する。上海国際航運中心プロジェクトにより、船舶関係の融資、海上保険などの業務の必要性も高まる。その結果、金融業そのものが発展するだけでなく、国際金融中心へ成長するための大切な足がかりとなる。

 2008年、上海港が取り扱った貨物量は前年比3.6%増加の5.82億トンとなり、世界一を維持した。コンテナ取扱量は2800.6万TEUで、こちらは世界第2位となっている。中国政府は、2020年の中国の1人あたりのGDPは3500米ドルに達し、2000年の倍増、さらにGDP総額では、アメリカを追い越しているという目標も掲げられている。しかし量的な目標よりも、質的な転換が必要だという専門家も多い。
 そういった意味でも、2020年達成目標の上海の国際金融中心と国際航運中心計画はより実質的な内容が求められていることになる。 (以上)


 

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