経済トピックス【2009年4月】

 

医療改革に臨む上海

 2009年4月6日、『中共中央国務院関於深化医薬衛生体制改革的意見』が発表され、市民の不満が多い中国の医療問題について、様々な制度が打ち出されることになった。この中で、2020年までに都市部・農村部の住民に関しても基本医療・衛生制度を確立し、公共医療サービスの向上を図るという画期的なものとなっている。具体的な改革案は2011年に発表される予定で、今後の動向が注目されている。

 もともと、中国では医療費は公費医療制度でタダ同然だったが、1980年代に中国は医療の分野でもいわゆる「市場化」を図り、医療衛生サービスの商業ビジネス化が行われた。しかし、結果的には医薬品の高騰と、医療資源の大都市での集中を導いた。さらに、農村医療の疲弊も大きな問題になっている。農村では大学卒業の医師が極端に不足しており、現在農村で活躍している医師たちの高齢化問題も深刻だ。そこで、今回の改革では医療費自己負担率の軽減と医薬品の大幅下落、さらに医療サービスの均一化などに力を入れることが約束された。

 『中共中央国務院関於深化医薬衛生体制改革的意見』では、基本医療制度の拡充に力が入れられている。すなわち、昨今の中国の病院で流行しているVIP化や医療費の高騰に対して、もっと公益性を高めた廉価な医療制度を拡充するところにある。現在の中国の現状は、病院としては採算性を高めるために、富裕者層に対しての医療サービス充実に力を入れているが、これが逆に一般市民の反発を買っていることも指摘されている。そのため、公立病院は本来あるべき公益性を全面に打ち出し、基本的な医療サービスに戻ることが求められている。その具体的な施策として、医薬分業や営利性・非営利性病院の役割の特化、政府の財政投入の増加なども含まれている。さらに、今後3年以内に基本医療保障制度の適用範囲を都市部・農村部住民の90%以上に高めることも目標として出されており、ここからも公立病院への政府の財政投入が増加することは間違いないとみられている。

 現在、中国の公立病院ではほぼ独立採算制が取られており、薬代などで収入を増やすことを余儀なくされている。そのため、中国の病院では普通は病院内に薬局が設置されており、これが薬代の下がらない大きな原因となっているとも言われている。そこで、上海市では松江区と長寧区ですでに医薬分業の試みを行っており、一定の成果を上げている。患者からも、医師が製薬会社からバックマージンをとっているのではないかという不満も多数出されており、こうした世論をかわす目的もある。しかし、医師など医療関係者の間には意見も多い。そもそも、中国の公立病院の医師待遇がよくなく、こうしたマージンがなければとてもやっていけないという現場の声も聞かれており、医療関係者の仕事に対する積極性を高めるための施策も待たれている。その一環として、医師のアルバイトを合法的に認めようとする動きも出てきた。中国では医師は原則医師免許が登録された医院でしか医療行為ができず、他の病院へ診療に出ることは禁止されていた。この禁止を緩和して、医師の積極性高めようというのだ。  

 こうした政府中央の流れを受けて、上海市衛生局では今後さらなる医療制度改革を行うことを表明している。全国に先がけて、2010年までに基本医療保障制度を上海市民全体にまで広げ、地域医療を担当する社区衛生サービスセンターの整備をすすめ、三級総合病院、二級総合病院との連携を強化する。現在、上海ではとくにどんな病気でも三級総合病院へ市民が押し寄せる傾向にあり、病院の対応が追いつかないという現実もある。それを、自己負担率を下げるなどの方法で、まずは地域の社区衛生サービスセンターで診察をうけて、総合病院への集中を避けようという試みも行われている。

 一方で、市内に2000軒あるという民間病院の多くは、資本金1000万元以下の中小規模な病院が中心で、一般市民の間でも必ずしも歓迎されているという状態ではない。日本などでは、民間のクリニックが医療全体で大きな役割を果たしているのとは対照的に、中国の民間病院はまだまだ市民権を得ていないのが現状である。そのために民間クリニック設立の条件を厳しくするなど、今後は管理強化のために様々な施策が検討されることだろう。 (以上)


 

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