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大陸おもしろ記事紹介

上海女性とは?


 「上海」と聞いてどんなイメージを持つだろうか?中国において上海といえば、租界が置かれた昔から、ある種人々の憧れの地であった。現在では、中国の豊かさを体現した魅力あふれる都市となっている。北京が首都としての機能を持つ落ち着いた政治の場であるとすれば、上海は開放的で華やかな商業の場といえよう。そこに生活する上海女性は、中国中の女性の注目の的である。良い意味でも悪い意味でも、噂の絶えることがない。彼女たちの間で何が流行っているのか、どんなライフスタイルが受け入れられているのか、常に目が向けられているのだ。広州から来た友人は感心してこう言った。「上海の女性は、おしゃれが本当に好きなのね。街を歩いていて目に付くのは洋服の店ばかり。広州だったら、これがレストランばかりになるのに」 上海女性のパワーには、確かに目を見張るものがある。常々外に目を向けており、日本で、台湾で、アメリカで、今何に人気があるのか反応し、すぐに、という訳にはいかないが無理のない形で毎日の生活に取り入れている。そしてその様子が、国内の他の地域に伝わっていくのだ。上海は広い中国における、流行発信源なのだ。彼女たちには、そこに住む自負心とプライドがある。
 今回はこの上海女性たちの特性を、もう少し掘り下げていくのが目的である。参考にするのは『LOOK・世界都市』 1999年1-2月号。少し古いが、興味を持ってしまったので取り上げる事にする(ちなみにこちらの本屋では、バックナンバーが簡単に手に入る。新刊と隣り合わせで置いてあるのだ)。日本のSK-IIの協賛で、「21世紀の新しい上海女性像を探す」という企画が実行されたのであるが、ここで5人の女性が選ばれた。そのコメントが載っていたのだ。彼女たちの生き方・考え方は、上海女性の魅力を縮したものであり、21世紀に向けての方向性を示したものでもあるといえよう。5人は、誰もが自分をしっかり持ち、見習うべき物が多い。同時に、そんな女性像を打ちたてる上海という街の懐の深さにも、拍手を送りたくなる。


◇女性?それは思いやりがあって、探求心が旺盛で、我慢も知ってる存在の事でしょう?

張小姐の場合
 彼女は現在、大学で植物学を教える副教授であり、また、生活面では幸せな家庭をもつ1人の女性である。彼女は自らを称して「現代版・良妻賢母」という。彼女は仕事を、社会価値と一人一人の価値との結合の上で成り立つものだとみなす。大学で熱心に教える姿は、学生達の大きな支持を得ている。
 休日は7歳になる子どもと、一緒に絵を描くことを好む。また、お茶を飲んだり、読書をしたり、草花の世話をして過ごすこともある。彼女はもの静かなイメージを人に与える女性であるが、内面も外見もあわせて、ベストの状態を保てるように努力しているという。

質問 : 女性として、あなたの一番魅力的な部分は何ですか?
 私はどちらかというと、明るくて陽気で、落ち込んだりすることがあまりありません。学生達は、私と世間話をすることを好んでくれているようです。実際、いろいろな打ち明け話を聞いて相談にのっています。
 私は家庭も仕事も、同じようにキチンとこなしています。およそ普通の女性達にできることは、私はすべてできるでしょう。ある人は私をからかって「万能の人」と呼んだくらいです。けれども、それは何もしないで実現したことではありません。自分を奮い立たせ、無理でもなんでもやってしまうようにした結果なのです。これが私の魅力かもしれません。
 私の夫は、私がとても女らしいと言ってくれます。けれども私にしてみれば、女らしさは少しあればそれで良いと思っています。ありすぎても困りますし、全くないのも考え物ですから(笑)。私の理想は、探求心が旺盛で我慢強い人間でありたいというものです。なぜなら、物事に凝る、ということは生活に彩りを添えますし、また同時に辛抱強さは物事を成し遂げる上で必要なものだと思うからです。時には学生を連れて農村に行くこともありますが、こういった場合には、悪条件の下でもその苦しさから逃げないよう努力しています。私はどのような状況に陥っても、このようでありたいと思っています。そのために周囲の人々は、次第に私を信頼してくれるようになりました。



 写真では、彼女は5人の女性の中で最も落ち着いた雰囲気を持つ。黒のシックなスーツがよく似合い、感じよく手入された髪が、肩のあたりで大きくカールしている。余裕のある、有閑マダムを彷彿とさせる。しかし顔つきはとてもしっかりしており、意志の強さがにじみでている。地面深くに根を下ろし、ちょっと やそっとでは動かせない何かがあるのだ。
 彼女の特徴は、内面の充実だけでなく容貌にも気を使っているところにあろう。大学の女性教授にありがちな、度の強い厚い眼鏡に時代遅れの服装、という野暮ったさはない。また、仕事もできるが、家庭もおろそかにしない。これが彼女のいう「現代版・良妻賢母」である。良い妻・良い母であるだけでなく、さらに一つプラスして仕事もできなければならないのだ。
 一見おとなしそうな外見にも関わらず、実はものすごく意地っ張りで負けず嫌いであることは、彼女のコメントからも明らかである。「家庭も仕事も、およそ普通の女性にできる事はすべて私にもできる」そう、ハッキリと言いきるところがすごい。陽気で明るい彼女は、理想が高く自分を信じるところが強い自信家でもある。大丈夫、私にはできると、苦しくとも前を見続け自分を磨くことを怠らなかった日々が、現在の 彼女をつくっている。少なくとも黙っていて成功したという訳ではない。
 自分自身に完璧を求め、意志の力でそれに近づいていこうとする強さには、見習うべき物があるだろう。




◇魅力的な男性とは、仕事ができて、ユーモアがあって、率直な人のことだと思う

王小姐の場合
 王小姐は復旦大学の外文科を卒業後、アメリカやヨーロッパで仕事をすることになる。そのため、訪れた国は少なくない。しかし現在はその会社を辞め、中国の農村の発展のために力を尽くすとある国営企業にいる。人々に貢献できる現在の仕事がとても好きだということだ。
 彼女は言う。人は必ずしも一番になる必要はない。けれども、何かの分野において一流になる必要はあると。21世紀の理想の女性とは、何か秀でたものを持つ女性であるという。つまり、1人の人間として自立しており、自分の価値(能力)を高めることに貪欲で、しかも、自身の生活や家族を大切にする事を知っている女性が目標なのである。

質問 : あなたはどんな男性に惹かれますか?
 私は口うるさいタイプや、人の注意をひいて自分を目立たせようとするタイプの男性には魅力を感じません。やはり、落ち着きがあって仕事のできる男性に惹かれます。1人の男性を判断する時には、その人の友達関係を見るのが有効な手段だと思います。まず、友達の少ない男性はあまり良いとはいえませんし、友達との信頼関係がそれほどできていないような男性も、おすすめできません。
 男性にとって最も重要な事は、ユーモア感覚があるかどうかだと言えるでしょう。何故ならユーモア感覚のある人は、人に対して寛容になれるからです。ですから私は在学中、一貫して同じ大学の男性を好きになりませんでた。彼らは皆、知識をひけらかし、自分がどれだけ偉いのかを示そうとばかりしていたのです。私は飾り気がなく、率直な人が好きです。いくつになっても、どんなに仕事に成功しても、ずっと子どものような素直な部分を忘れない人が理想です。



 彼女は復旦大学外文科の出身である。復旦大学は十何億もの人口を抱える中国において、北京大学に次ぐ名門校だ。しかも上海においては、北京大学よりもその名声は高い。誰もが憧れる復旦大学の人気学科、外文科に入学したというのだから、彼女はとてつもない才女である。他の女性たちの出身校は紹介されてないのに、彼女の所だけ載っているということからもよく分る。
 しかし彼女は、そんな自分の経歴に対して自慢に思っている様子もない。それどころか、理想の男性を語るにあたり、「同じ大学の男性は一貫して好きになれなかった」という。本ばかり読んでテストの点で人を評価する世間知らずな彼らを、勉強バカと評して歯牙にもかけない。普通、復旦大学の男性といえば、将来出世するに違いないと結婚相手に引っ張りだこなのである。
 彼女のおもしろいところは 、仕事の選び方にも現れている。花形の外資系の会社で勤務し、海外に何度も行っていたのであるが、あっさりそれをやめてしまう。そして現在では、薄給で地味であると人気の薄い国営企業に転職した。中国農村の発展に尽くしているのだという。
 彼女は他の人よりも、物事の本質を見抜く目を持っているのかもしれない。周りに流されず、常に本物を選ぶことができる。写真で見る彼女は、快活でサッパリとしており、とても楽しそうだ。真っ赤なおしゃれなワンピースを着こなし、足取りも軽く歩く姿には、先に紹介した大学教授の女性のような重さや気負いがない。持って生まれたものを生かして、自由におおらかに生きているという感じがする。しなやかな柳のようだ。ユーモア感覚があって、率直な人が好き、というところにも彼女らしさがうかがえよう。


◇やりがいがあって、いつも新しいものを生み出しているような、そんな仕事がしたい。

張小姐の場合
 彼女は5人の中で最年少である。現在、食品会社で社長補佐をしている。彼女は仕事に打ち込んでいるだけではなく、自己を充実させるために、様々な分野の本を数多く読むようにしているという。同年代の女性と比べ、物事をよく見極めることができるのはそのせいかもしれない。
 彼女は、ただ綺麗なだけでお人形のような女性には魅力を感じないという。21世紀に向けてお手本とする女性は、他人の幸せのために尽くせるだけでなく、何にもまして自分の幸せのために努力する人だという。自分自身は普段の生活の中に、ロマンや情熱を見出せる感性を持ち続けたいと心がけている。

質問 : あなたは仕事をどうとらえていますか?
 私は変化があって、挑戦してみたいと思える仕事に出会い続けたいと思っています。仕事のなかには、毎日同じ事の繰り返しで、何の変化もないものも確かにあります。しかしわたしはこういった仕事は、本当の意味で仕事といえるものではないと思います。それは日常の習慣になってしまっています。理想の仕事とは、常に学ぶ物・吸収すべき物を与えてくれる様なものだと思います。そういった仕事を得るために、わたしは常に自分を高めています。
 私は、仕事において最も重要なのは、人間関係だと思っています。これは人生においても当然大切で、物事の正否に深く関わってくる事でしょう。人間関係をおろそかにする人は、十分な力を発揮できません。周りの手助けと自分の努力があって、はじめてうまくいくのですから。



 彼女はパッと見ると、とてもおしゃまでかわいらしいイメージを人に与える。背は小さい。髪の毛を上にまとめ上げ、ボーダーのシャツとベストをあわせて着る。肩から斜めにかけられたバックが、彼女の活動的なさまを表している。格好は、どこから見ても現代っ子だ。他の女性よりもどこか幼く、女性というより女の子といった方がしっくりくるようなところがある。小さな事にまで楽しみを見つけ、くるくるとよく動くようなイメージがあり、まるで子リスのようだな、と思う。
 彼女は、魅力的な女性とは何かと聞かれて、自分の幸せのために努力をする人だと答える。以前は自分のことよりも、他人のために尽くす女性が理想だとされるような風潮があったが、それだけではダメだという。他の人の事だけを気にしていたら、自分はいったいどうなるのか?満足できない状態を我慢するのが女らしさなのか、それとも誰かが幸せにしてくれるのを待つが女らしさなのか?何かが違う。自立するということは、自分で自分を幸せにできるという事なのであろう。
 彼女は常に変化を求める。向学心が旺盛で、変化の中で自分自信を鍛え、高めていくことを好む。仕事をまるで遊びのようにとらえ、困難にぶつかってもニコニコと挑戦していくような感じを受けるのだ。しかしそれだけはなく、仕事において人間関係が最も重要だと認識しているのが、彼女の深さであろう。あまり高いところばかりを見るのではなく、目の前のものをこだわりを持ってこなしていく、そんなタイプのよう に思った。


 雑誌にはあと二人紹介が載っていたが、ここでは簡単に経歴を紹介しておく。

周小姐
 10歳で北京舞踏学院に入学。その後上海芭蕾舞踏団に所属、引退後舞踏教師となる。彼女は現在の教師としての仕事に情熱を感じている。早くから両親と離れ、独立をした。彼女の成功の原因は、常にうぬぼれず、自分を見失わないよう努力したことによる。21世紀の理想の女性とは、内面と外見の一致した、自分を良く知っている人だという。

蒋小姐
 彼女は現在、5つ星ホテルのVIP接客係である。以前2回ほど日本に派遣され、研修を受けたことがある。彼女にはまた、快活な妻であり母であるという一面もある。彼女の趣味は広く、ピアノ・旅行・ダンス・日本語と様々だ。21世紀の理想の女性とは、仕事で成功しているだけではなく、家庭を大事にし、この二つの関係を上手く取り持つ事ができる女性だという。

 5人の女性たちの生き方や主張を見ていくと、21世紀にどんな女性が魅力的とされるのか、その原形をつかむことができよう。それぞれのタイプは違うものの、重なり合う部分もある。
 まず誰もが女性として、内面と外見・家庭と仕事、その両方を磨く事を主張している。自分自身を充実させるために趣味を大事にしたり、仕事におけるスキルアップを心がけたり、向上心が旺盛だ。また、それだけにとどまらず、女性としての美しさも追求している。妻として母として、それぞれの役割を楽しんで行おうとしているように感じる。そのための努力は少しも惜しんでいない。「強いな」と思うのは、常に前進しようという姿勢がうかがえる部分だ。現在の状態に満足しきるのではなく挑戦的なのだ。目指すのは例えば勉強だけ、仕事だけに秀でている人ではなく、人間的に豊かな女性。片意地を張って男性と張り合うのではなく、女性であることを前面に押し出した上で、明るく楽しみつつ公私共に自分の可能性を伸ばそうとし ている姿である。
 今回選ばれた5人の女性は、全員それぞれの分野のプロフェッショナルであった。家庭の主婦、という人は1人もいない。つまり、上海における21世紀の理想の女性は、仕事も一流、プライベートも一流、経済的にも精神的にも自立した女性、ということになろう。1人目に紹介した張小姐の意見でもあるがこれが「新・良妻賢母」という訳だ。昔ながらの、周りに尽くして堪え忍ぶ、という型の「良妻賢母」は、パワーあふれる上海にはふさわしくないのであろう。
 この記事を読むにつれ、上海の、そして中国の21世紀の姿に興味を覚える。今日でも以前から変わらず、物事の順序は国家が最優先である。社会主義を標榜しているのだから当然だ。しかし次第に、国家も大事にするが同時に個人も大事にする、という流儀が受け入れられつつあるようだ。個人に価値を置こうと意識転換をすすめているのは、日本も中国も同じで変わらないのだなと感じた。

北里 恵

(本連載は1999年5月~1999年11月に掲載されました)


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