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*ホームシックにかかる人、かからない人*
留学生活も3週間目に入ったある朝。授業に行こうとドアを開けると、向かいの部屋に住んでいた女の子が、スーツケースを持って廊下に立っていた。「どうしたの???」「実は、今日帰国することにしたの」「えーー?!」「突然でごめんねー。またね!」「き、気を付けて…」何か事故でもあったのかと心配だったが、後で聞いたところによると、どうやら彼女は上海生活に嫌気がさしてホームシックにかかってしまったらしい。確かに前の晩「早く日本に帰りたいよう」と言っていたけれど…それにしてももうちょっとで一ヶ月終わるというのに、速攻で帰らないとならないくらい耐えられなくなってしまったなんて…中国ってやっぱりダメな人はダメなんだなぁ。私なんかみんなが「超まずい」と言っている部屋の魔法瓶のお湯も平気で飲んでるし、時間が許せばもっと居たいくらいなのに。何というかちょっと気の毒な事件だった。
*手をつなぐって…*
上海の男性って優しいですよね。タクシーのドアはちゃんと開けてくれるし、寒いと上着を貸してくれたり。それが日本人のメンタリティーを持つ我々には、時として勘違いの要因になりそうで、恐いです。
で、ふと思ったんですが、車道を徒歩で渡る時、必ずといっていいほど上海人男性の方々はこちらの手をひいて渡ってくれますね。これってごく当たり前のことなんでしょうか??? 日本人の男性は彼女でもない女の子の手なんかつなぎませんよね。なのでちょっと「これって一体…」と、照れつつ考えたんですが、どうなんでしょう? 私の大勘違いならいいんですけど…ちょっと気になったもので。
賢明な読者の皆さん、これって、どっからどのへんまで当たり前なんでしょうか。友情か、はたまたラブの意思表示だったのか。私に隙があったのか、ただ単に日本人だったからなのか。どなたかその辺にお詳しい方がいらっしゃれば、ご教授賜りたく存じます。
*卒業!*
あまり授業のことは書かなかったけれど、ほとんど毎日ちゃんと出席して、少しづつ老師の喋っていることも分かるようになってきた。慣れてきた頃に終わるのが旅の常である。いよいよ最後の授業も終わり、卒業試験が行われるという。我々には聞き取りテストと5分間スピーチが課せられた。スピーチ…どうしよう…。
そもそも初級から入門へドロップアウトした時に「これでピンインから始められる」と思っていたら、教科書の例文が少し簡単になっただけで基本的には同じ授業だったので、発音に関しては全く何もやっておらず、四声もピンインも滅茶苦茶なのである。
スピーチの課題は「自分の家族について」と「上海の印象」であった。うん、これなら何とか話せそう。でも私のインチキ中国語は誰にも聞かれたくないなぁ…と思っていたら、試験は先生とマンツーマンで行われた。よかった。「私の家は東京の市区にあります」「上海は車も人も多いのでびっくりしました」「でも東京も人口は同じくらいですね」などと、世間話のような「スピーチ」を冷や汗だくだくかきながら何とか終了した。
同日夜、歓送会が行われた。宿舎内の食堂でご飯を食べつつ、卒業証書や復旦大学のメダルが手渡されるのである。名前を呼ばれて恐る恐る受け取り、開いてみると「ヒアリング87点、スピーチ85点」という成績が記されていた。思ったより良かったのでほっとした。
最後は、同じクラスのみんなや老師たちと記念撮影大会になった。日本に帰ってきた今、あちこちから写真が送られてきている。そのせいかどうか、未だに中国語で夢を見る。道で看板を見ると、中国語読みをしたくなる。友達と喋っていてつい「そんなの差不多だよー」と言ったりして煙にまいてしまう。ちゃんと中国語を使いこなせないくせに、変な日本人になってしまった。
日本に帰ってきて、便利な生活に戻ったけれど、何となく空気が薄いというか、あの大変だった留学生活が時折懐かしい。またきっと行ってしまうような、そんな気もする今日この頃である。
(この項おわり)
高橋留美 |