|
その1
今年夏、ある日系企業が中国のあるメーカーから訴えられそうになっているというウワサを耳にした。理由は「商標権の侵害」だと言う。早速、ウワサの真相を調べるべくこの会社を訪れた。 「見て下さいよ、これ」 手渡されたファックスには妙な文言が並んでいた。 「貴社がネット上に掲載する××商品並びに価格の広告ですが、これは当社にとって日本の顧客に対する信用を失うものです。当社は御社と交渉してきたつもりですが、未だにネット上に広告が残っています。これは商標侵害にあたり、状況の発展によっては、当社は日本の媒体に貴社の行動を暴露し、法廷に提訴するつもりであります」 これは中国に進出している某企業が、たまたま中国である商品を大量に買い付け、それをネット上で広告したことから始まった騒動である。 日系企業を仮にA社、ファックスを流してきた中国側メーカーをB社としておこう。これまでのいきさつはこうだ。 B社はA社に自社の製品を売った。A社は買い取った商品をネット上で広告し、不特定多数に売却しようとした。B社はその行為について、「商標の侵害」とし、「ネット上の××製品の広告を即刻停止する」こと、さらに「ネット上にお詫び掲載する」ことを求めてきたのである。 「中国では買った商品を第三者に売るのは法に触れるのか」ということをめぐって、A社オーナーをはじめ、その会社内は騒然となった。 A社の中国人スタッフにその点を尋ねると、(彼らの常識の範囲では)こう返ってきた。 「中国では代理契約が無い場合、やっぱりそれは違法ですよ」 彼らによると、仲買人として商品を右から左に流すのも、代理契約が必要だと言うのである。 このリクツに従えば、プロ・アマ問わず安い洋服を買いに来る“上海のアメヨコ”華亭路などでは、「五十枚買おうが百枚買おうが、お客はそこで買った商品は自己で消費する」という限定条件付きで買い物してることになるのだ。 しかし少なくとも、日本ではそのような商習慣はない。買ってきた商品に自分のブランド名を勝手に付けたなら「商標権侵害」もあるだろう。だが、A社はB社××ブランドをうたったままに流通させているのだ。
(北倉亜沙) |