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北倉亜紗の社会面~上海老百姓ウワサの真相

第3部

電球1コが400元?


「投資物件の相続、当局「前代未聞」!」不動産管理編 その5

バブル崩壊直後の90年代前半、日本の投資家たちが中国の不動産に手を出した時期があった。中国の不動産会社が日本各地でセミナーを開けば、たちまち契約が。現地見学ツアーでも、中国側の「熱烈歓迎」に押しまくられ、物件を「おみやげ」にしてしまうお客も少なくなかった。

中国東カン市の日系不動産会社に駐在していた女性、彼女は私の友人だが、退職した今、その当時をこう話してくれた。

「いろんなお客さんがいたの。印象深いのはね、ある有名な女性声楽家がいらしたとき。空港に出迎えたときドヒャーッだった。舞台用かと思われるロングドレスで、花飾りのある帽子で来たのよ。いつも唱うような調子で『ああら、そうなの』とだけしか言わない。で、息子の持ち分とあわせてふたつの物件をポンと買っちゃったの」。

投資家などというものは、不動産だとてスーパーの買い物とさして変わりがないのだろう。電話一本で投資物件を「じゃ、それ頂戴」。即決してしまうのもちっとも珍しくないと聞く。

ところが今、巷ではちょっと困った問題が起きているらしい。

相続が発生したとき、どうしたらいいのか--。

ここは投資物件の管理やテナント付けを請け負っている中国のあるコンサルタント会社。ある日そこに一通のファックスが舞い込んできた。

送付上に記されているタイトルは、「相続の件」。

その内容によると……。ある有名な日系企業の女性オーナーが突然死した。相続が発生したときに、初めて財産目録の中に中国の物件があることを知った。どのように名義変更をしたらいいのでしょう?

名義変更、何しろ中国で購入しものだけに、日本では手続きができない。

コンサルタント側は八方手を尽くした。中国の土地管理局に行くが、何しろ「こんなことは初めてなので」と担当者。それぞれ担当者によっても説明が全く異なるという。

「一体担当官の誰に従ったらいいものか。当局も混乱気味でしたよ」とコンサルティング会社社長はすっかり疲労困憊だ。

結局、この社長は個人的な人脈を駆使して、この一件を解決した。当局に勤める知人の証言を動かぬものとして抑えたという。

その後、ファックス送付の主、相続を受けた中年の夫婦が中国に手続きにやってきた。 無事手続きが済み、帰国の途に就くとき社長にこういったそうな。

「現地に物件を管理する会社があるだけでも、またこういうフォローを請け負う会社があるだけでも私たちはラッキーだったかもしれません」

彼らの知人には同じく中国不動産に手を出した人もいたが、結局、業者がドロンしたり、きちんとオーナー向けに管理する会社でも、実際こういう問題にはお手上げという会社も多い。

これから先、この手の「前代未聞」的な事件が続々発生するに違いないだろう。当分は、人脈でねじ込むイレギュラー的解決方法に頼るしかないのだろうが。

(北倉亜沙)


(本連載は1999年6月~1999年11月に掲載されました)

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