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北倉亜紗の社会面~上海老百姓ウワサの真相

第1部

食肉 この頃、肉がどうもヘン?~肉の安全性に気づき始めた上海老百姓~


第1話

ここ数日続いた「食肉食うべからず」事件、ちょうどそれと前後するようにして、「最近、肉がおいしくない」、そんな上海市民の不満がささやかれるようになった。

これまでは一般の老百姓、市内に流通する食肉に対して、何らギモンを感じることなく食生活を送っていた。安心の食肉として彼らは自信を持っていたフシもあったくらいだ。それはきっと、養豚、養牛を取り囲む環境が未だ社会問題としてクローズアップされていないということが大きな原因なのだろう。しかも、改革開放後「腹一杯、しかも食肉が食えるようになった」という変化を、大衆は手放しで喜び、それに存分にひたっていた部分もあったのではないだろうか。

ところが一転して今年に入ると、市民は眉をひそめるようになった。

「この前買ってきた牛肉、ちっとも牛肉のにおいがしない。以前は牛肉なんか香ばしくておいしかったのに」。

「豚肉もそう。なんかただのカタマリみたいで、ちっとも豚の味がしない」

そんな話が界隈で聞かれるようになったのだ。

その原因については未だはっきりとはわからない。ただ、怪しげだと思えるフシがいくつかあるのだ。そのひとつが、去年あたりから出現した個人の養豚業者たちの存在だ。

去年あたりから、街中の市場では、個人の養豚業者が自分で育てた猪を直接売りに来る光景が目立つようになった。

「安くするから買ってよ」。彼らがもたらす闇ルートのおかげで、市場には少なからず影響が及んだ。そしてついには、養豚業者の続出で生産量が需要量を上回り、豚肉の値段が下落に転じた。豚もも肉、確か昨年秋口には500グラムで10元以上はしたはずなのに、今では半値近くになってしまったのである。

その背景には、実は昨年からブームになりはじめた「養猪」があった。

養猪とは、つまり養豚(猪=豚の意)なのだが、その頃、マスコミは連日この種のレポートを繰り返していた。上海近郊では養豚が「儲かる商売」になっているというのだ。

この猪肉をめぐって、近郊農村ではどんな変化が起こっているのか。去年、筆者は上海郊外の農家を訪問した。

増築を終えたばかりの庭先は、富裕さそのものを物語っているかのようだ。昼下がりに響きわたる麻雀のジャラジャラ音と、カラオケのエコー。彼らは今、猪小屋の大々的増築に取りかかっている。早速、裏庭に連れていってもらった。小作人が30坪はあるだろうと思われる豚小屋に煉瓦をひとつづつ積み上げていた。

このように今から1年前の上海近郊では、遊んでいる土地に自家養猪場を建てる風景があちこちで見られた。一頭1万元として、年間50匹を出荷すれば50万元の年収だ。餌はレストランから1年100元の契約で残飯を卸してもらっているとか。それ以外に配合飼料を追加するにしても、基本的に遊ばせながら肥えるから、ほとんど手間もコストもかからないビジネスだと言うのだ。

(北倉亜紗)


(本連載は1999年6月~1999年11月に掲載されました)

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