車内を見回してみる。
平日の昼間とあってか乗客は8割方がお年寄 りである。みんな窓の外を注目していて、結構にぎやかな雰囲気である。
この都市型鉄道網の整備に伴って、引越しを余儀なくされた住民も少なくない。テレビでは「人民のため、お国のため。」とインタビューに答えていたが、今日この列車に乗っているお年寄りのなかにも、自分が以前住んでいたところを懐かしむ姿が数多く見受けられた。開発と保存の共存は相反する概念であるだけに、人々の心情は複雑なようだ。
上海南駅を出た列車はしばらく地上を走る。
石龍路駅には立派な車庫が建てら れていて、今後の都市型鉄道網の発展を予期するようである。つい数年前まで上海の市民の交通の足はバスがメインだった。1300万人に及ぶ人々は混雑を我慢しながら仕事場まで通っていたのである。いつ着くか分からないバスに揺られながら、必然的に市民の住居は職場の近くに制限されてしまう。
それゆえ上海では住む地域によって人々を差別する「上只角」「下只角」と言うような言葉があった。上海語という方言の中にもまたその地区特有の方言が作られたりした。
しかしここ数年の変化は非常に著しい。
地下鉄1号線が開通し、人々に一種の革命をもたらした。それは閔行区などの市郊外に住宅を構え、地下鉄で通勤すると言う発想である。日本ではベッドタウンという言葉はお馴染みであるが、ここ上海では最近数年間で起こった大きな変化なのである。そして明珠線が開通した。
沿線の住宅開発にもたらす影響は非常に大きい。それは住宅開発と地価の面で見ても明らかである。
鉄道はその後、上海駅付近を除いてすべて高架橋を走ることになる。
なんと言っても目線が新鮮である。自動車の高架道路は早くから建設されていたが、鉄道ほど間近に下界の景色を楽しむことができない。しかも鉄道の両側の防音壁は景色を楽しめるように透明版が用いられていて、非常に視界がよい。
列車は上海の8万人体育館を右手に北上し、内環状線の車と平行しながら宜山路に滑りこむ。この駅は将来建設される明珠2号線と交わる駅で、もうその準備工事が始まっている。
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どの駅もまるで日本の新幹線の駅のように非常に美しい。
ホーム全体が屋根で覆われていて、待ち時間の間にも雨風に打たれることはなさそう。そういえばホーム、コンコースに広告が一切無かった。
自動改札機はまだついていない。
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地下鉄に自動改札機がついた頃、人々が不慣れのため混乱を起こし、かえって長蛇の列が出来てしまったことを思い出す。いまでも田舎から上海に来た人たちの大変な姿が見られる。そのたびに駅員の顔の怖いこと。
虹橋駅から中山公園駅にかけては、非常に美しい近代的な町並みを見ることが出来る。
政府も沿線の建物の美観には特に気を使っている。旧式の6階建てのアパートは、沿線地区に限って優先的に外壁を塗装しなおしたり、また屋上を三角屋根風に改造したりする工事を行っている。
この明珠線は上海の旧市街地、つまり今にも倒壊しそうな危険家屋が密集する地区の再開発の意味合いも強い。