チャイナエクスプローラー

我是大学生〜中医薬大学の教室より〜

中国留学は本当に安いか? その1
寮のおはなし


 思えば3年前の9月、右も左も分からない状態で、はじめて来た上海。
 海外経験はありましたが、英語を母国語としない国で生活するのは生まれてはじめての経験でした。到着直後は、言葉がさっぱりわからないし、友達もいません。第1日目は食事さえできず、手持ちのインスタントラーメンで一人寂しく済ませたなんてこともありました。その当時、コンビニ、スーパーの類がまだまだ珍しく、日系のコンビニが出来たという情報を聞くと、みんなで見学ツアーに行ったものです。これも笑い話ですが、まだ上海にマクドナルドが無かったころ、友達が北京へいったついでに、スーツケースいっぱいに土産のハンバーガーを持って帰ってきたというようなこともありました。今では考えられませんが。
 留学生は、とにもかくにも大学内の寮で生活することになっています。ところが私が語学を勉強していた時初めて入った寮は、「寮」といってもこれがかなりデラックスで、どちらかというとホテルでしょう。各部屋にバス、トイレ、テレビ、電話はありましたし、面積はツインルーム並み、カーペット敷きの床にエアコン装備で小姐が毎日ベッドメイクをはじめとして掃除もしてくれます。つまり「外賓」扱いなんです。料金は1日1部屋10から16ドル。月にするとだいたい2500元から3600元。不便なのは、台所がなく、部屋での自炊が禁止されていることです。また中国人の学生とは、同じ学内で生活しているにもかかわらず同じ寮に住めないことも残念です。寮費は日本円にすると月3万5千円から5万円と貧乏学生にはつらいものがあります。そこで移ったのが学内の中国人旅行者を対象にした招待所でした。家賃は月2500元、部屋は20平米、12畳ほど。シャワー、トイレ共同。クーラー無しで天井におおきな扇風機が 回っています。板で作られたベッドと、蚊帳、勉強机が良い雰囲気を醸し出してます。しかもなんと中国人大学生女子寮の3階ということでびっくり。つまり1階、2階は女子寮で、毎日非常ににぎやかな声が聞こえてきます。自転車を取りに行くとき、どうしても1階の女子寮の廊下を通らなくてはならず、廊下に干されていた色とりどりの洗濯物の下を通る時は思わず赤面してしまいました。ちなみに男子学生はどんな時でも原則立ち入り禁止です。ですから夕方や週末になると、女子寮の入り口に彼女を待つ彼氏が、次から次へと集まってくるのであります。
 中国の大学は全寮制で、原則学生全員が寮に住まなくてはなりません。学生達は、私と同じ大きさの部屋に7〜8人が住んでいます。このメンバーは卒業まで基本的に変わることはないそうで、4年間寝食をともにして培われた友情は永遠の財産だそうですが、中には仲が良くなく崩壊寸前のグループもあるとか。中国語でこの寮のことを「寝室」といいます。授業が始まるころには、みんな着飾って教室へ走ります。夏になれば女学生たちが両手にスイカを抱えて帰ってきます。テスト前になると、ベッドの上で本を読んだりしてますが、消灯が10:30と早いらしく、学生達は消灯後、ろうそくを使って勉強していました。ボヤの危険性が高いので校則では禁止されていますが、背に腹はかえられないそうです。
 それでも親の管理から離れた寮生活は非常に楽しいそうです。もちろん親からすれば心配そのもので、上海出身の学生は週末には実家に帰り、洗濯などもついでにしてもらうそうですが、地方から来る学生はそうはいきません。帰省に汽車で2日、3日もかかる学生はざらなので、年2回の長期休暇にしか帰れない学生も多いのです。現在は各部屋に電話がついていて、親ともよく連絡が取れるようになったと喜んでいました。昔はフロアに電話が1台しかありませんでしたが。一人っ子が多い今の若者の実情をよく反映しています。
 私が移った女子寮の3階には、一応中国人の寮同様にシャワールームもどきはあり、24時間使用可能と聞いていたのですが、もちろんお湯はでません。夏は”打たせ水”みたいな状況でしたが、冬はさすがにそうはいきません。ですから大学内の学生用の共同シャワーに通っていました。1階は男子、2階は女子に分かれているこのシャワー、大部屋に天井から蛇口がぶら下がっているという極めて単純なものですが、お湯はきちんと出ます。もちろんブースに分かれているわけでも無いので開放感抜群です。時間は1日にお昼と夕方の2回だけ。お湯がなくなったら「営業終了」です。お湯の出る時間になると学生達は洗面器に石鹸とタオルをいれて、ツッカケで浴場に行く姿を校内で見かけます。そうなると私達もシャワー場に向かいますが、なによりも学生の数が多いので、どうしても毎回蛇口の取り合いになってしまいます。せっかく自分の番になっても蛇口が壊れていたりして、結構苦しめられていました。そういえば毎日シャワーの時間を中心に学生生活を送っていたような気がします。
 寮のトイレも結構勇気がいりました。もうまさしく中国式です。舞台のように1段上がったところに、長い側溝が埋められてあり、そこを跨ぐという代物でした。もちろん側溝に跨ぐと自分の前と後ろには壁はありますが、横にはドアがないんです・・・。跨いでるときに見知らぬ中国人の旅行者と顔を合わすのはべつに気になりませんが、やはり毎日顔を合わす留学生にばったり合ったりすると、なんとなく気まずいムードです。便器は長い側溝ですから、水を流す時は上流部分からものすごい勢いで水が流れてきます。もし自分が用をたしているときに水が流されてしまったら・・・、もう最悪です。上からたくさん見たくないものが流れてきます。しかし機能的と言われればそうも感じる不思議なトイレでした。
 洗濯機は留学生で共同出資した全自動を置いていました。留学生寮内にも1回30分で1元(=14円相当)の有料洗濯機は有りましたが、2層式というこということもあり、ほとんど使いませんでした。中国人の学生も寮に洗濯機は置かれていましたが、台数が少ないため、冬でも手洗いとか。ここに目をつけ、学校周辺にコインランドリーなるものが出現しました。

 この古い寮には想い出がたくさん詰まっていますが、近年改装されてしまい、もう記憶上にしか存在しないものになってしました。少し寂しいですね。
 1日の大部分を過ごす寮ですからやはり快適さが大切でしょう。私のいた寮のように、鼠とゴキブリと格闘するのが良いとは決して言えませんが、しかし大学の大部分の学生がそういう環境に住んでいるという事実は忘れるべきではないと思います。語学生の場合は中国人学生と触れ合う機会が少なくなりがちで、ひょっとしたらそういうことを知らずに過ごしてしまうかもしれません。しかし私達、留学生だけが恵まれた環境にいることは絶えず忘れるべきではないのです。それが中国人学生との相互理解の第一歩になると思います。
 とにかく中国人の強さを感じた寮生活でした。
 ちなみに中国人学生の寮費は年払いで、7〜8人部屋で年300元から500元です。近頃の大学教育改革の一環として、重点大学を中心に、中国人学生寮の体質改善が進んでおり、将来は4人1部屋となるようです。  では次回は学費についてです。

 

(山之内 淳)


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