新暦の7月7日は日本では七夕ですが、ここ中国では毎年高校3年生にとって試練の大学入試になります。大学進学率がまだ5%に満たない中国で、特に一人っ子政策の上海においては、この日の意味合いは日本とは大きく異なります。おまけに浪人は制度上可能でも、実際にはほとんどできないような環境にいる中国の高校3年生にとっては、本当に一生に1回の大学入試「高考」なんです。それが毎年7月7日から3日間にわたって行われるわけです。
9月始まりの中国。暑い時期の入試ですが、今年は比較的涼しく例年より楽だったようです。この大学入試に前後して、テレビでは親を精神的、肉体的に支援するカウンセリング番組が放送されたり、また受験生のために、車のクラクションの制限、工事現場の夜間工事禁止等がなされています。企業も積極的に受験生のために貢献し、この時期は社会全体が「高考」のために動いてるようです。
それだけに高校3年生の受けるプレッシャーはすごいものです。頭の働きを良くすると言うキャッチコピーのもとで、滋養強壮剤のコマーシャルがこの時期異常に増えます。浪人生がほとんど無い状態で倍率が3から4倍。毎年かなりの激戦です。
私の中国人の友達にも、数学の点が足りず、惜しくも大学に入ることができなかった人がいます。彼はその後上海の語学専門学校で日本語を学び日本語の1級の検定試験に合格した後、大学で勉強する夢を果たすべく、今日本で留学する準備をしてます。どうやら来年にでも行けそうですが、とにかく大学はキャリアアップのための登竜門なのです。
さて、では留学生の「高考」と言うことですが、こちらも数年前から制度が整え始められてきています。日本のラジオ講座の広告を見ますと、多数の業者が中国の名門校の名前を借りて「推薦入学有り」と宣伝しているのをよく見かけますが、実際のところそんなにやさしいものではありません。
まず、大抵の留学生が語学でつまづきます。語学留学に関しては、授業料を払えば勉強できますが、本科(学部)の場合は少し異なります。大学側の要求としては、文科系留学の条件であるHSK6級以上(中級レベル)に加えて、理系留学のための数学、物理、化学の筆記テスト(国家教育委員会による外国留学生数理化考試)に合格する必要があります。普通、理系はHSK3級と数学、物理、化学の筆記テストだけでよいのですが、中医系は文系、理系の両方の色彩が強いためHSK6級と数学、物理、化学の筆記テストの両方が課されます。
数学、物理、化学の筆記テストはレベル的には日本の大学入試センター試験ぐらいですが、なんと中国語以外に日本語、韓国語、英語でも受けることができ、これは非常に助かりました。出題範囲は日本の高校とほぼ同じですが、中国人の試験も含めて「微分、積分」が入ってなかったのは興味深いです。
さて、これらの要求を満たすために、大学側は2年の語学学習期間を与え、また学科試験の補習授業もありますが、試験に合格さえすればいいので、1年で本科に進むことも可能です。しかし、自分の周りでもこれらの試験にすべて合格した留学生は国籍問わず非常に少ないのが現状です。私の学年での日本人留学生では、25人ほどいた中医大学希望の語学生のうち半分が諸事情により帰国してしまい、1年で本科に進めたのはそのうちの2人という結果でした。
もちろん中国と言う日本とは全く違う異国の地で留学するという生活習慣の違いから、なかなかうまく勉強を軌道に載せることが出来ない、中国語の教育システムがまだ成熟していないなど、さまざまな要因が考えられますが、ひとつ言えることは、語学修得という大命題があり、現地で留学しておきながら、多くの留学生がその命題を果たすことが出来ていないという現実があるのです。これは別に中国の留学に限ったことではないと思います。私が以前にいた英国でもそうでした。
では、試験にパスできなかった人達はどうなるか?一応救済処置が講じられています。それは本科生(学部生)とはべつに試読生(聴講生)という制度があり、語学留学時代にそこそこ真面目にしておれば形式上は大学に入学できます。ただし入学後の成績如何では学校側からは、いつも留年と退学のカードがちらつかされています。加えて午前中だけしか授業の無かった語学時代とは異なり、本科生になると朝から晩まで講義が入り、授業についていくという面で極めて苦しめられる場合が多いようです。このあたりの詳しいことは後で書くことにして、では次回は学費と寮についてご紹介しましょう。
(山之内 淳)
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