中国の男女 に贈る―じゃぱにーず浪漫

(本稿は、もちろん筆者の勝手な見解で書いています。そして時に事実を誇張し て書いています(^^) 「そんなことはない」という抗議はご勘弁!)


◆クリスマス◆

 ― クリスマス ―

 この言葉は、英語のChristmasに近い発音ですが、意味は欧米とは全く異なります。
   クリスマスという言葉を聞くと、日本人は、なんとも甘くてロマンチックな気分になってくるのです。
 クリスマスは日本の若い男女にとっては最大の年中行事ですので、この日を目前に控えた今回はクリス マスをテーマに挙げたいと思います。


◆ どんどん盛り上がる雰囲気

 12月に入ると、街じゅうでクリスマスの飾りつけがなされます。上海でもクリスマスの飾りつけが増え ましたが、日本では百貨店やホテルはもとより、西小山(注1)の商店街だってクリスマス一色です。各 店がセンスを競い合うようにクリスマスツリーを飾ります。街路樹は、ちょうど国慶節の時期のように無 数の豆電球で輝きます。
 雰囲気を否がおうにも高めてくれるのが音楽です。商店街を歩いても地下街を歩いても、『ジングルベ ル』やら『赤鼻のとなかい』やらが聞こえてきます。山下達郎(注2)の『クリスマス・イブ』とワムの 『ラスト・クリスマス』は、もうクドイほど流れています。
 クリスマス直前は、ステディー(注3)なカップル(注4)の話題は「イブをどう過ごすか」が中心に なりますし、 カップル一歩手前の男女の場合は、男性は「イブに誘おうかどうしようか」と、女性は「イブに一体誘わ れるだろうか」と毎日ドキドキするのです。カップルになれそうな相手もいない人は、周りの同性の友人 から「イブどうするの」と頻繁に探りを入れられ(その友人も恐らく予定がないのでしょう)、予定のな い人は25日の朝がくるまで毎日憂鬱な・暗黒の日々を過ごすことになります。
 


◆ 誰と過ごすか

 クリスマスイブは恋人と。これが日本人の基本中の基本です。クリスマスイ ブは毎年父親・母親・娘の3人で過ごしてきた家庭も、ある時突然娘が「今年 のイブは友達とパーティーをする」と言う日が必ずやってくるのです。この時 母親は娘が大人になったと実感し、父親は怒りと悲しみで卒倒しそうになりま す。
 親に友達とパーティーと言って出てくるからというのもあるのでしょう。一 次会は大人数で騒ぐ、ということもあります。しかし時計が9時をまわる頃に は、1人、2人と人が消え、最後には彼氏・彼女がいない人のみが残ります (結局、同じ境遇のものどおしで、うまくカップルができあがることもありま しょう)。


◆ 場所の確保

 この日への準備は何ヶ月も前から始められます。クリスマスイブを最高の夜にするためには、場所の確 保が最大のカギとなります。男性にとって、10時の門限がある彼女を攻略できるかどうかも場所にかかっ ています。普段ですと「ホテルに行こう」などと言えばすぐに頬に平手を食らう(注5)こととなりますが、クリ スマスイブだけは特別です。この日だけは彼女は「ロマンチックな夜を過ごしたい」という気持を強く 持っていますし、「今日はひょっとしたら・・・」ということも思っているに違いないですから、最高に ロマンチックな演出さえ凝らしてあれば彼女が同意してくれる可能性が大いに高まります。
 そのためには、彼女に「行ってみたい」と思わせるような最高級ホテルの確保が秘訣となります。『ラ ブホテル』(注6)ではだめなことは明らかです。その判断の基準は「ホテル」という単語を付けずに呼 べるかどうかでしょう。『センチュリー・ハイアット』『赤坂プリンス』『フォー・シーズンス』(注 7)などなど。女性は「ホテル」という単語には過剰反応をするのです。『ウェスティン』だけで通じる のに「ウェスティンホテル」などと言うのは愚の骨頂です。「『苗場(注8)プリンス』を予約したよ」 と言えば、彼女は白銀のゲレンデとプールとフランス料理を思い浮かべ、そこに床(ユカと読まないで下 さい。トコです)があることなど完全に忘れてしまいます。
 しかし、こうしたホテルの部屋は、かなり早い時期から満室となってしまいます。バブル最盛期の苗場 プリンスは、予約受付が開始される9月1日に、その日のうちに一杯になってしまったことがあると聞き ます。日本人は一般的に言って、あまりコネ(注9)を使うことを好みませんが、この日ばかりは別で、 使える コネは使うべきです。ゼイタクスキー場の最高峰アルファトマムリゾート(注10)の、その中でも一番ゼ イタクなスゥィートルームのみのタワーは、相当のコネがないと泊まることができません。部屋の中に ジャグジーやサウナまであるこの部屋を予約してあれば、どんなに貞操の固い女の子でも「うん」と言っ てしまうでしょう。


◆ 女性の苦労

 以上は男性サイドから書いたわけですが、女性サイドからも時に特別な準備がなされます。
 女性は、クリスマスイブを寂しく過ごすことを極度に恐れます。このため彼氏のいない女性も、時には 自ら最高級ホテルを予約し、その夜をいっしょに過ごす素敵な彼が現れるのを待つわけです。涼しくなり 始める11月になっても彼がいない場合はかなり焦り、そして街がクリスマスのオーナメント一色となる12 月になっても彼がいない場合は、もう諦めへと変わり、積極的に忘年会に参加し、そのたびに「寂しい の」を連発して周りの人にからむようになるのです。


◆ 食事が大事

 普段はピラフ(注11)やスパゲティばかり食べているカップルも、この日ばかりは奮発してフランス料 理です。日本では寿司屋や中華レストランの方が高級なことも多いのですが、クリスマスはフランス料 理。一歩譲ってイタリア料理というところです。
 クリスマスイブは「クリスマスディナー」と称するもののみとなることも多いのですが、味のわからな い人ばかりとなるためか、需要が大きく供給を上回るために少々質を落としても生産量を増やそうとする 店が多いためか、いずれにしてもあまりいただけるものではありません。
 食事は男性に大きなプレッシャーを与えます。フランス駐在の経験でもなければフランス料理やワイン のことなど分かりません。でも「ロマンチックな演出」のためには、そしてその後のためには、堂々とし た「知ったかぶり」が求められるのです。食前酒、ワイン、オードブルの注文などで戸惑わないように事 前にある程度考えておく必要があります。特にワインについては、肉料理ー赤、魚料理ー白などという次 元ではなく、個々の料理にもあわせて選び、さらに銘柄と年代についての能書きをたれる必要があります が、そんなことを一夜漬けで覚えられるものではないので、メインディッシュもワインも事前に決めてお き、彼女の注文をそこに誘導するという荒業が時に必要になります。「この店は○○がおいしいことで有 名なんだ」なんてセリフは序の口で、「今年、パリでは○○が流行っているんだ」と言ったて構いませ ん。そして決めておいたワインについてうんちくを仕入れておけば、彼女に一気に尊敬されることになる かもしれません。
 会話も大事です。マンガの話しなどくだらない話し、日中関係など頭の痛くなりそうな話しなどは避け るべきでしょう。「このテリーヌ。コッテリーヌしてるね」なんてくだらないシャレは絶対避けなくては いけません。文学の話しや高尚なジョークなどを考えておく必要があります。その時に武器になるのはフ ランス料理に関するうんちく。例えば、現在の、オードブル、魚、肉、デザートと一皿に一人分を盛って サーブする形が定着したのは18世紀からで、それまでは全ての料理が一度に食卓に並べられ、中華料理の ように肉や魚は大皿盛りの塊を切り分けて食べていたとか、これもまさしく中華料理のように、自分のと なりに座る女性に、なるべくおいしい部分を切り取ってくるのがいい男の条件だったとかです。  
 そして男性にとって最も辛いのは支払いです。フランス料理を食べてうまいワインを飲もうと思えば2 人で2万円(注12)ほど必要になってきます。しかしこの日だけはやむを得ないものと覚悟します。彼女 のいない友達からお金を借りてでもいい夜を演出しなくてはなりません。


◆ プレイボーイには悪夢の一日

 彼氏のいない女性と同様、でも全く正反対の理由で、クリスマスが近づくにつれプレイボーイ諸氏の憂 鬱も高まっていきます。この日はプレイボーイ君の全ての彼女が彼と過ごすことを求めますから、それを どうアンパイするかで頭を悩ますこととなります。とあるツアモノは、4人とのデートをアンパイしたそ うです。

  • 一人目の彼女とは昼から夕方までデートをし、「クリスマスイブは毎年家族と過ごすことになってい るから」と言って次のデートに向かいます。
  • 次に本命彼女と早めのディナー。食事がほぼ終わる頃に悪友から電話をかけてもらい、彼女に「ゴメ ン。仕事が入った。夜に予約してある部屋にいくから」と言って次へ。
  • そして2度目の遅めのディナー。もちろん「おなかがいっぱい」なんて顔をしてはいけません。「仕 事が忙しいけど、なんとかディナーの時間だけは出てきたよ。でもまた仕事に戻らなくてはならない」と 言って次へ。
  • 門限の厳しい彼女とのデートを次に入れます。夜景のきれいなバーで。ここでも仕事のせいにして 「ゴメン、いっしょに食事ができなくて」と言います。そして1時間程を過ごした後「あ、もうこんな時 間だ。帰らなくっちゃご両親が心配するね」と言って別れ、本命彼女が待つホテルへ・・・・・
 プレイボーイ諸氏は何人ともデートをこなさなくてはならないので、デート代もプレゼント代も人の2 倍の3倍もかかり、肉体的にも金銭的にも悪夢の一日となるのです。

 先日、とあるプレイボーイ君と話しをしていると、クリスマス・イブは香港とのこと。聞けば友人の結 婚式に出席しに行くとのことです。「えらく自己中心なカップルだね」と言ったところ、「いやあ、これ で全ての悩みが一挙に解決したよ」との答え。これぞプレイボーイの発想なのです。

 以上日本のクリスマスについてご紹介しました。クリスマスは欧米ではキリストの生誕を祝いますが、 ごく一部のキリスト教徒を除く大多数の日本人若者男性にとっては自らの生誕(わかり易くいえば「自ら の子作り」)を祝う日なのです(本当に子供を作りたいかどうかは別問題)。

 なお、クリスマスにおいて重要な要素であるプレゼントについては敢えて書きませんでした。この点に ついてはちょっと奥が深いので次回に紹介させていただきたいと思います。


(注)以下の単語は、学校では習えませんが、日本語学習者にとっては必須です!完全にマスターしま しょう。
  1. 西小山:西小山は東京の地名。安いことで有名な商店街を有する。日本で最高級住宅街のうちの一 つ・田園調布、日本有数のおしゃれなショッピングシティ・自由が丘から至近距離にあり、雅子皇太子妃 の実家がある洗足の隣町なのに、妙に庶民的な町
  2. 山下達郎:日本で1、2を争う有名な男性歌手。顔はテレビ向けではないが、超実力派。最近『クリ スマス・イブ』と『ホワイト・クリスマス』をリメークしたCDを発売。JR東海(東海道新幹線の会社)の コマーシャルでは8年ぶりに『クリスマス・イブ』が復活
  3. ステディ:英語のsteadyより。「ステディな恋人」とは、友達にも紹介している恋人といったような 意味
  4. カップル:英語のcoupleより。恋人同士の男と女を指す
  5. 平手を食らう:ヒラテヲクラウ。頬を手のひらでぶたれること。テレビ の演出の一つ(テレビドラマでは平手打ちのシーンが出てくるが、実際には見 たことが一度もない)
  6. ラブホテル:観光・ビジネスに全然関係なく存在するホテル。詳細は次回以降に説明する予定
  7. センチュリー・ハイアット、赤坂プリンス、フォー・シーズンス:いずれも最高級ホテル
  8. 苗場:新潟県のスキー場。ゲレンデ前にプリンスホテルを擁し、おしゃれなスキー場の元老的存在
  9. コネ:英語のconectionより。人脈。
  10. アルファトマムリゾート:日本のバブル期を象徴するリゾート。バブル崩壊後はかなりの経営不振で 苦しんだ。北海道の中心部に位置し、北海道の空の玄関千歳空港からの専用列車も運行されている。冬は スキー、夏はゴルフが中心。大型室内プール等も擁する。
  11. ピラフ:西洋風炒飯。初めてのデートでは食べていけないものとされて いるもののうちの一つ(スプーンで食べなくてはいけないが、最後の一口がな かなかすくえなくてきれいに食べられないから)。初めてのデートで食べては いけないものとしては、さらにスパゲティーミートソース(口のまわり真っ赤 になる)、イカ墨のスパゲティー(歯が真っ黒になる)がある。
  12. 2万円:約1500元


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