| TOP > 連載 > スーパー食いしん坊達 > 10-巨匠と囲む紹興の味 咸亨酒店 |
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中国電影が好きだ。 中国映画も誕生からほぼ100年。作品の生産本数、レベルの面で、何回かのピークを迎えているが、上海は30-40年代に初期の繁栄期を担った<東洋のハリウッド>であった。日本もここに中華電影製作所を設立し、日中合作の作品を制作した。(余談だが近年この作品の一部がモスクワで発見され、日本のフィルムセンターで公開される予定とのこと。中国の資料館にも保存されていると思うのだが、阪東妻三郎が高杉晋作に扮して上海を舞台にした<狼煙は上海にのぼる>を見たいものだ。) 上海在住日本人の映画ファンが集まって<上海映画研究会>と称する食事会を催しているのだが、先般その会員の方の紹介で<中国の黒澤明>と呼ばれている謝晋監督を迎えた。謝晋監督は、現役の中国映画界では最もキャリアの長い映画作家の一人である。50年代から作品を発表しはじめ、日本でも文化大革命を正面から取り上げた<芙蓉鎮>の公開によって一躍知られるようになった監督である。戦前の映画人と新世代結ぶ重要な映画人で、娯楽性と主張性をあわせもって作品を手堅くまとめる実力は日本の市川昆監督にも擬えることができると思う。 さて紹興出身の監督を歓迎するのには紹興料理で、ということで今回の料理屋になったのだが、この店は知る人ぞ知る越の都、紹興の老舗の上海支店。魯迅の親戚が開業したといわれており、ここの紹興酒はまさに蔵出し、絶品との評判が高い。紹興料理の特徴は、と謝監督がおっしゃるには、とにかく<臭い>料理、とのこと。臭い程美味い、というのは東京の<くさや>に匹敵する感覚で、匂いも同様だった。豆腐も魚も肉も、臭い料理のオンパレードだが何故かこの料理が、紹興酒に絶妙に合うのはたしかだ。監督の勧め上手もあったのだが、女性も含めて10人で六斤も飲んでしまった。 監督は、4月から中国の女子サッカーをテーマにした新作を準備中。纏足で縛られていた中国女性が新中国で完全な男女平等を獲得し、自分の足でたって大活躍をするところに女性解放のテーマを托したい、と。日本遠征のシーンで、日本ロケの計画もあるようだ。何らかの形で協力できる手立てはないものかと会員一同頭をひねっているところ。 談論風発、監督を囲んでの映画談義はつきなかった。店の前に佇んで、我々を見送ってくれたのは、現代中国の夜明けへと旅立つ魯迅少年を啓発した旧き良き中国の文人―孔乙己の像であった。 咸亨酒店 広東路717号 TEL:6361-7365
(宋楽生) |
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